研究課題
平成28年度は脳室周囲白質軟化症(PVL)の研究を行い以下の成果を得た。1)脳室周囲白質軟化症(PVL)実験モデルの組織変化を観察する方法として、組織透明化法を導入した。病態形成の観察に免疫組織学的手法がしばしば用いられる。感度の高い解析方法として、凍結切片に蛍光抗体を用いて観察する方法が一般的であるが、組織凍結時の人為変化が避けられない。PVLでは、脳室周囲白質が、血流障害により変性・壊死を起こし、組織が粗造化するため、その変化が組織凍結による人為的変化か、病的な変化を区別することが、通常の凍結組織切片では困難である。本課題を解決するため、組織透明化法を導入した。PVL誘導を行ったラット新生仔脳を、ハイドロゲル包埋法、Switch法、Scale-S法などで透明化し、蛍光抗体による免疫染色を行ったところ、Scale-S法で病変の保持と良好な染色性が得られた。2)ニーマンピック病C型(NPC)では、ライソゾームを介する細胞内コレステロール輸送に異常が生じるために、オリゴデンドロサイト(OL)の分化が障害され、その結果、髄鞘形成不全が生じることを明らかにし、NPCの病態形成を通してPVLの病態を理解することを進めてきた。今年度で研究では、NPCの原因遺伝子であるNPC1遺伝子の発現上昇を介した、細胞外コレステロールの取り込みが、オリゴデンドロサイト(OL)の分化、ミエリン化を制御するマイクロRNAの発現を制御し、前駆細胞(OPC)からOLへの分化を誘導することを明らかにした。