研究課題/領域番号 |
25461661
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 秀樹 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (60435956)
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研究分担者 |
西江 渉 北海道大学, 大学病院, 講師 (20443955)
夏賀 健 北海道大学, 大学病院, 助教 (70645457)
清水 宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00146672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水疱性類天疱瘡 / プラスミン / 17型コラーゲン |
研究実績の概要 |
水疱性類天疱瘡(bullous phemphigoid)は,表皮真皮境界部に存在する17型コラーゲン(COL17)に対する自己抗体により生じる自己免疫疾患である。BPはCOL17に対する自己抗体の結合と,その後の炎症により発症すると考えられているが,その際のタンパク分解酵素であるプラスミンがBPの病変部で発現亢進していることが知られている。本研究の目的は,BPの水疱形成におけるプラスミンの関与について解明することである。 平成26年度は,平成25年度に作製したCOL17のプラスミン切断部特異抗体(非コラーゲン領域であるCOL17のNC16A内の508番目セリンSer508のアミノ末端部位を認識)を用い,15例のBP患者皮膚組織で検討を行った。水疱形成部では,表皮真皮境界部に陽性所見を確認できた症例は認めなかったが,4例において水疱形成辺縁部の表皮真皮境界部に線状あるいは一部顆粒状に陽性所見を確認した。平成25年度に,凍結正常ヒト皮膚切片を薄切切片上でプラスミンと反応させると同様の所見が得られることを確認している。以上の結果から,4例のBP患者皮膚において,実際にCOL17がNC16A内の508番目セリンSer508部位で切断を受けていることが明らかとなった。プラスミン切断を受けた4例と陰性であった11例では臨床症状に特記すべき相違は得られなかった。ちなみにCOL17の切断酵素はプラスミンの可能性が最も高いが,生体内皮膚では既知の酵素に加え多くの切断酵素が働いていることが予想される。従ってプラスミン以外のセリンプロテアーゼが関与している可能性も否定できないと思われる。また,水疱形成部では陽性所見を得られなかった要因として,切断を受けたCOL17の断端が表皮真皮境界部に存在しないことが考えられた。実際に水疱内容液中に切断を受けたCOL17の細胞外領域が多量に存在するという報告に矛盾しない結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に作成した通り,COL17のプラスミンによる切断部位が同定され,プラスミン切断時に生じる切断部を特異的に認識する抗体の作製にも成功し,実際のBP患者皮膚におけるCOL17の切断動態の解明が進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載した通り,以下の2項目について推進していく予定である。 1.BPモデルマウスへのプラスミンの投与(平成27年度) ヒトCOL17を発現する遺伝子改変マウスへ,BP患者IgGに加えプラスミンを投与することで生じる病変の重症度と水疱発症の有無について検討する。 2.プラスミン阻害剤による水疱形成阻害効果の検討(平成27年度) BPモデルマウスへプラスミン阻害剤を投与し,水疱形成阻害効果の検討を行う。
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