研究概要 |
Fli1遺伝子の恒常的な発現低下がマクロファージの極性変化に及ぼす影響について検討するため、まずはじめに野生型マウスおよびFli1+/-マウスの腹腔マクロファージをIL-4あるいはIL-13で刺激して、M2型マクロファージの標識遺伝子(Fizz1, Argenase-1, Ym-1)の発現量をreal-time PCR法を用いて比較検討した。Fli1+/-腹腔マクロファージでは、IL-4およびIL-13刺激に対するFizz1, Arginase-1, Ym-1の発現量が野生型腹腔マクロファージと比較して有意に亢進していた。次に、ヒト単球性白血病細胞株であるTHP-1細胞をFli1 siRNAあるいはscrambled non-silencing RNAで処理し、24時間後にPMAで刺激し、更に32時間後にLPS + IFN-gammaあるいはIL-4 + IL-13で刺激し(それぞれM1型とM2型への極性変化を誘導する)、その16時間後にmRNAを回収し、M2型標識遺伝子の発現量を調べた。マウス腹腔マクロファージと同様に、Fli1 siRNAで処理したTHP-1細胞ではscrambled non-silencing RNAで処理したTHP-1細胞と比較して、IL-4 + IL-13刺激に対してFizz1, Arginase-1, Ym-1の発現量が有意に亢進していた。また、野生型マウスおよびFli1+/-マウスにブレオマイシンを皮下注射し、皮膚組織におけるM2型マクロファージ標識遺伝子の発現量を調べたところ、Fli1+/-マウスでは野生型マウスと比較してFizz1, Arginase-1, Ym-1の発現量が有意に亢進していた。また、THP-1細胞を用いてクロマチン免疫沈降法を行い、Fli1がArginase-1遺伝子のプロモーター領域に結合することが明らかとなった。現在、Arginase-1遺伝子に関してpromoter assayを行い、Fli1 binding siteの同定を試みるとともに、Fli1がArginase-1 promoterの活性を制御する機序について検討中である。
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