研究課題
本研究では、Fli1遺伝子の恒常的な発現低下がマクロファージの極性変化に及ぼす影響について検討を行っているが、昨年までの研究成果により、Fli1遺伝子の発現低下がM2マクロファージへの分化を誘導することが明らかとなっている。今年度は、その分子メカニズムおよびそのin vivoにおける意義について検討を行った。①Fli1遺伝子がM2マクロファージへの分化を誘導する分子メカニズムクロマチン免疫沈降法によりM2マクロファージの分化マーカーであるarginase-1遺伝子のプロモーターにFli1遺伝子が結合することを明らかにした。次に、DNA oligo pull-down assayを行い、arginase-1遺伝子プロモーターにFli1が配列特異的に結合することを明らかにした。同定できたFli1結合部位の配列について検討したところ、過去にM1マクロファージヘの分化を制御していると報告されているある転写因子の結合部位とオーバーラップが認められた。そこで、arginase-1遺伝子プロモーターを用いて、これらの転写因子間の拮抗作用によりarginase-1遺伝子の転写が制御されている可能性について現在検討を行っている。②in vivoでの効果について検討Fli1 flox/floxマウスとLysM-Creマウスを交配し、マクロファージ特異的Fli1欠失マウスを作成したところ、皮膚において自然に線維化が生じることが明らかとなった。現在、その機序について、血管障害・炎症にも着目して検討を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
1年目は「in vitroおよびin vivoにおいてFli1遺伝子の発現がM2マクロファージへの極性変化を誘導することを明確に示すこと」、2年目は「その分子メカニズムについて検討すること、およびin vivoにおける効果を確認すること」が目的であったが、これらの点に関しては現時点で達成できている。マクロファージ特異的Fli1欠失マウスで認められたphenotypeの変化について、その機序に関する検討も現在順調に解析が進んでいる。
本研究は、全身性強皮症患者のマクロファージにおいて転写因子Fli1の発現が恒常的に低下していることに着目して立案されたものである。最終的な目標は、Fli1の発現異常に基づくマクロファージの形質変化が全身性強皮症の病態に及ぼしている影響を明らかにすることである。したがって、マクロファージ特異的Fli1欠失マウスにおいて、全身性強皮症の主要3病態である「線維化」「血管障害」「炎症・自己免疫」がどの程度再現できているかに注目して検討を進めて行く予定である。
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