研究課題/領域番号 |
25461666
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宇原 久 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (40201355)
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研究分担者 |
芦田 敦子 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (00596786)
奥山 隆平 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80292332)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | EGFR阻害剤 / エルロチニブ / ゲフィチニブ / 脂腺細胞 / SEB-1 / PPARγ / NFκB |
研究実績の概要 |
EGFR阻害剤(エルロチニブ、ゲフィチニブ)を添加した培養脂腺細胞SEB-1では、TNFαをはじめとする様々な炎症性サイトカインが上昇すること、細胞が大粒の油滴を含有し肥大することから、炎症と分化が誘導されていると考えられた。そしてこの過程でPPAR経路やNFκB経路が関与していることが明らかとなった。SEB-1を用いて、さらに詳しいメカニズムを解析した。(1)PPARγと分化に関する検討:PPARにはα、β、γのサブタイプがある。γアゴニストを加えた細胞は、αやβを加えた細胞に比べて油滴の増数や細胞の肥大が顕著に認められ、これらの細胞はOil Red O染色にて陽性を示した。また、mRNAレベルで脂腺の分化マーカーadipophilinの発現がコントロールと比べ30倍上昇した。(2)PPARγと炎症に関する検討:SEB-1にα、β、γのアゴニストを加えてTNFαの上昇を比較した検討では、γアゴニストを加えた細胞のみ有意な上昇を認めた。また、エルロチニブにより産生が誘導されたTNFγは、PPARγアンタゴニストにより抑制された。(3)NFκB と分化に関する検討:SEB-1にNFκBの選択的アゴニストであるベツリン酸を加えたところ、油滴の増数や細胞の肥大が顕著に認められ、これらの細胞はOil Red O染色にて陽性を示した。また、ベツリン酸によりadipophilinとmelanocortin-5-receptor(MC5R)の発現が有意に上昇した。(4)NFκBと炎症に関する検討:ベツリン酸によりTNFαはコントロールと比べて有意に上昇した。また、エルロチニブにより産生が誘導されたTNFαは、NFκBアンタゴニストにより有意に抑制された。 以上より、EGFR阻害剤によりPPARγ経路とNFκB経路は活性化するが、いずれも炎症と分化に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFR阻害剤では様々な皮膚障害を引き起こすがその詳細な機序はわかっていない。本研究の目的は、培養脂腺細胞SEB-1を用いて、①EGFR阻害剤により産生が誘導されるサイトカインは何か? ②EGFR阻害剤により脂腺細胞の性質はどのように変化してサイトカイン産生異常を招くのか? ③どんなシグナル伝達系に変化が生じるのか? を解明し、④最終的には新規の治療法の開発に結び付けることを目指している。今年度までに①-③まではおおむね達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroでは、EGFR阻害剤により炎症と分化が誘導されたことが明らかとなった。次に同様の変化がin vivoでも起こっているかの検討を行う。 ・臨床検体(EGFR阻害剤と投与された患者の皮膚病理組織)について、免疫染色を行い分化や炎症が誘導されているか確認する ・EGFR阻害剤をマウスに投与し、脂腺周囲に炎症が引き起こされているかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた研究に入れなかったため、マウスの購入費が余ったが、次年度購入予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養用培地や器具、real time PCR試薬、免疫染色試薬、マウス購入、EGFR阻害剤や各種agonistやantagonist試薬、国内外学会への参加費などにあてる予定である。
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