研究課題
皮膚表皮の角質層は、保護・バリアー機能・保湿などの重要な機能を果たしている。研究代表者らは、皮膚顆粒層特異的プロテアー ゼSASPase (Skin Aspartic Protease) を欠損させたマウスを作製し、その欠損が、アトピー性皮膚炎関連蛋白質であるProfilaggrinの分解異常を起こし、且つ皮膚表層に乾燥肌を呈することを明らかにしてい た。すなわち、顆粒層が、どのようにして保湿された角質層を形成するのかを明らかにすることは、アトピー性皮膚炎や角化症の理解に重要であると考えられる。これまでの研究により開発した「顆粒層細胞の分離・培養法、細胞死誘導法」を用いて細胞生物学的解析を行った。その結果、培地中のCa2+の存在下において、細胞内カルシウム濃度の一過性の上昇が認められた後、細胞死が起こり、ケラトヒアリン顆粒とDNAが分解されていくことが明らかとなった。また、Keratinの変化をin vitro, in vivoで可視化できる蛍光蛋白質プローブも開発した。in vivoイメージングでの解析により、繊維状のケラチンネットワークは、角化過程において、高密度な凝集を、核の消失と相関して行うことが明らかとなった。さらに、Filaggrin KOマウスにおいては、既に顆粒層細胞において、野生型に比べて断片化したネットワークを形成していることが明らかとなった。一方で、SASPase KO マウスでは、顆粒層では大きな違いがなく、角質層においてケラチンネットワーク異常が起きていることが推察された。以上のように、本研究により、顆粒層細胞の角化を引き起こす外的環境が明らかになり、その結果として起こるケラチンの大きな構造変化が角質層の性質に重要な影響を及ぼすことが示唆された。
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J. Clin. Invest. Insight
巻: 2 ページ: e96882
10.1172/jci.insight.96882
臨床免疫・アレルギー科
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