研究課題
前年度まではStevens-Johnson症候群(SJS)及び中毒性表皮壊死症(TEN)のメチルプレドニゾロン療法後前後のバイオマーカーの検索を進めた。本年度は、新規にSJS/TENでの変動が指摘されているsFasL、グラニュライシンなどのバイオマーカーも追加して解析した。検索が遅延していた薬剤性過敏症症候群(DIHS)においても同様にバイオマーカーの解析を開始した。この結果、これまではTENとSJSは一連の病態と考えられてきたが、sFasLは発症初期のTENにおいて顕著に増加していたのに対して、SJSではsFasLの増加は認められなかった。また、多種類のサイトカイン及びケモカイン測定の結果を、SJS、TEN、DIHSなどの臨床病型を踏まえて解析した結果、TENにおいては、sFasLに加えてIP-10、IL-6が著明に増加し、IL-2、IL-10が減少していた。これに対して、TENの軽症型とみなされてきたSJSに進展した群では、IL-10、IFN-γが上昇していた。一方、経過が遷延したり、自己免疫性甲状腺炎などの後遺症を残す特徴を有するDIHSでは、TNF-α、IL-5、IL-10の増加が認められた。本研究では増加するバイオマーカーだけでなく、その減少するものも含めて検討し、さらにそれらを単独ではなく組合せて評価することにより、重症薬疹への進展の予測が的確にできることを明らかにした。特にsFasLの結果は、これを他のバイオマーカーと組合せて評価することにより、最重症型薬疹であるTENへの進展を予知することが可能になることを示している。DIHSにおいても変動する特異的なバイオマーカーグループが明らかになり、初期の典型的な症状の発現前にDIHSへの進展を推測することが可能になった。これらの結果は、初期治療の選択が必須な重症薬疹において極めて有用な所見と位置づけられる。
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