研究課題
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis、以下AD)では、フィラグリン(FLG)遺伝子変異による皮膚バリア機能低下が重要な因子のひとつであることが明らかにされてきた。本研究では、日本と韓国のAD患者におけるFLGの遺伝的異常を再度詳細に調べ、その免疫学的異常と臨床症状との関連性を検討した。日本人ADの74例、韓国人ADの75例に対して、アジア人特有に検出されるという8つの変異(p.Arg501X、c.3321delA、p.Ser2554X、p.Ser2889X、p.Ser1695X、p.Glu1701X、p.Ser3296X、p.Lys4022X)の検出を行った。日本人ADでは約3割がFLG遺伝子変異をもつとする報告があるが、今回の検出頻度は日本人ADが18.9%、韓国人ADが21.3%でやや低い傾向であった。また、AD患者の血清や皮膚中で高発現すると最近報告された分子であるペリオスチンは、慢性的なTh2サイトカインの反応に重要であるとされている。本研究で対象としたAD血清のうち、日本人ADが18/24例(75%)、韓国人ADでは43/77例(56%)においてペリオスチンが高値となった。ADにおける臨床的重症度スコアであるEASIとペリオスチン値には相関が認められたが、FLG遺伝子変異の有無とペリオスチン値には関連性がみられなかった。本研究では、FLG遺伝子変異を基盤としたADの背景を追試することができた。免疫学的異常の指標となるペリオスチンに注目しFLG変異との関連性を検討したが、両者に相関は認められなかった。同変異に伴う皮膚バリア異常がどのように免疫機能と関わるかは、さらなる検討が必要と考えられ、全エクソンシーケンスによるADの新たな疾患感受性遺伝子の抽出などが今後待たれるところである。
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