研究課題/領域番号 |
25461683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
清水 晶 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (70396638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | human papillomavirus / squamous cell carcinoma / Bowen's disease / condyloma |
研究概要 |
第一の目的「皮膚腫瘍におけるHPVの網羅的な検出」に関しては、 研究代表者は有棘細胞癌40例において、PCRを用いたHPVのタイピングを行い、さらにin situ hybridization で組織内でのHPVの局在を検討した。抗p16INK4a抗体、抗HPV抗体による免疫染色も行った。結果は、40例中HPV陽性例はわずか2例であり、それらは2例ともBowenoid papulosisから生じていた。この成果は現在論文投稿中である。また、今年度の皮膚悪性腫瘍学会でも発表する予定である。この他に、外陰部腫瘍におけるHPV感染、色素性コンジローマとHPV感染、巨大コンジローマとHPV56感染について3本論文発表した。これらの研究によりHPVによる皮膚腫瘍の特徴が明らかになり、発症予防のためのHPVワクチンの開発に役立つ。 第2の目標「HPV感染の皮膚病変形成への役割」について、 皮膚で検出されるHPVによる型特異的細胞変性効果については、これまでに多くの報告があるが、そのメカニズムは不明である。HPV感染による封入体形成を研究するには細胞内小器官の同定が不可欠である。我々は現在遺伝性疾患で見出した数種の変異蛋白を培養細胞に発現し、その凝集部位を同定する実験系を確立している。凝集蛋白の小胞体、ゴルジ体における局在を共焦点顕微鏡により観察する。この実験に加え、凝集蛋白の糖鎖切断を組み合わせた生化学的な実験系を検討している。これらの実験系を用いて、HPVの蛋白の封入体形成メカニズムを検討したい。これまで皮膚科領域で報告されてきた多くのHPV関連の皮膚腫瘍の病変形成のメカニズムを分子レベルで検討できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の目的である「皮膚腫瘍におけるHPVの網羅的な検出」については当初の予想以上に解析が進み、HPVと皮膚腫瘍に関して英文論文3本を発表することが出来た。現在進行中の上記プロジェクトも順調であり、HPV DNAの検出のみではなく、HPV関連の発癌に関与する遺伝子の検討も可能である。また、第2の目標である「HPV感染の皮膚病変形成への役割」に関しても、細胞内小器官の同定を共焦点顕微鏡と生化学的な手法で解析することが可能になり、HPV遺伝子を培養細胞に導入する準備が整いつつある。この他にも免疫不全の患者から未報告のHPV遺伝子断片を検出しており、新規HPVの同定に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
第一の目的である「皮膚腫瘍におけるHPVの網羅的な検出」については、上記のように有棘細胞癌をさらに症例を増やして検討する予定である(約200例)。HPVDNAの検出のみではなく、HPVによる発癌に関与する遺伝子も検討する予定である。メラノーマにおいてもHPV関連の報告が散見され、有棘細胞癌と同様に検討予定である。第2の目標である「HPV感染の皮膚病変形成への役割」に関しては、細胞内小器官の同定と生化学的な解手技をさらに確立したい。また導入するHPV遺伝子を得るために、各種HPVをクローニングしたプラスミドも研究機関から分与して頂く予定である。新規HPV同定についてはRolling circle amplification (RCA)とLong-template PCRを組み合わせて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要な酵素量などを予備実験で確認するなど、計画的に実験を進めることが出来たためである。次年度に大量の検体を取り扱うこととなり、余剰金を充てる予定である。 計画に従い、HPV検出用の試薬、共焦点顕微鏡関連、生化学的な実験(免疫沈降など)、免疫染色などに用いる予定である。
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