強皮症のモデルマウスであるSclerodermatous GVHD マウス(以下、強皮症マウス)は、マイナ一組織適合抗原が不一致である B10.D2 (H-2d)マウスの骨髄と脾臓細胞を放射線照射されたBALB/Cマウスに移植することによって誘導した。CD19欠損マウスは遺伝的にIL-10 産生regulatory B細胞(制御性B細胞)を欠損しているため、制御性B細胞の解析に有用である。CD19欠損B10.D2マウス(ドナーマウス)および、CD19欠損BALB/Cマウス(レシピエントマウス)を用いて制御性B細胞の役割を解析した。CD19欠損B10.D2マウスの骨髄と脾臓細胞を、放射線照射されたBALB/Cマウスに移入(ドナーが制御性B細胞を欠損)したところ、コントロール群に較べより重症の強皮症マウスを発症した。また、線維化の部位の細胞浸潤を検討したとこ、コントロール群に比べCD19欠損ドナー群ではIL-13産生T細胞の増加が認められた。CD19欠損B10.D2マウスをドナーとして使用(ドナー由来の制御性B細胞だけが欠損している)した強皮症マウスに制御性B細胞と他のB細胞をそれぞれ骨髄移植と同日に移植したところ、制御性B細胞を移植した群では強皮症マウスの改善効果が認められた。制御性B細胞の抑制機序の解明のため、制御性B細胞をT細胞と共培養し解析した。制御性B細胞とCD4+T細胞の共培養の実験系にて、制御性B細胞はCD4+T細胞の細胞増殖抑制効果は認めないものの、サイトカイン産生能(IFN-γ)を有意に抑制した。また、全身性強皮症患者と健常人の末梢血中の制御性B細胞を測定したところ、強皮症患者で有意に制御性B細胞が減少していた。さらに治療前後で、測定すると治療後に皮膚硬化の改善とともに、制御性B細胞の増加が見られ、制御性B細胞は病勢を反映することが示唆された。以上の結果より、制御性B細胞は強皮症の発症において抑制効果を有していること、さらには強皮症に対する制御性B細胞を用いた治療の可能性が示された。
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