研究課題/領域番号 |
25461687
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
猪爪 隆史 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (80334853)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CD271 / メラノーマ / T cell抑制因子 / NGF |
研究概要 |
本研究の平成25年度の計画は、代表者がこれまでの研究にて発見した、メラノーマに発現される複数の新規T cell抑制因子荷関して、1,T cell活性化抑制のメカニズムを明らかにする、2,メカニズムに基づいて効率的な阻害方法を検討、開発する、3,抑制分子の担癌生体内での影響とそれを阻害する方法の有効性をin vivoで検討するであった。そして平成25年度の研究成果は候補分子の一つ、CD271について以下に記す新しい知見を得ることができた点である。 1に関して代表者らは、CD271が活性化してメラノーマ細胞を障害しようと活性化したT cellから発せられるIFNgによって著しく上昇することを発見した。また活性化T cellはIFNgのみならずCD271のリガンドであるNGFも放出する事を明らかにした。そしてCD271とNGFの結合によってメラノーマ細胞内のシグナルが活性化し、その結果T cellがメラノーマ細胞を認識する目印となるMART-1などの抗原量が著しく減少することを突き止めた。またCD271はPD-L1という代表的なT cell抑制分子と連動して発現されていること、相加的にT cellを抑制することを明らかにした。そしてここまでの成果を国際研究雑誌に発表し、受理された。2に関してはNGFやCD271の中和抗体、ブロッキング抗体をT cellとメラノーマ細胞の共培養液に入れる事でT cellの活性化が増強されることを明らかにしている。3に関しては現在、B16マウスメラノーマにCD271を強制発現したものをマウスに接種して生体内動向を観察する実験系を確立し、研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は、すでに同定している複数の分子について、1,T cell活性化抑制のメカニズムを明らかにする、2,メカニズムに基づいて効率的な阻害方法を検討、開発する、3,抑制分子の担癌生体内での影響とそれを阻害する方法の有効性をin vivoで検討するであった。その一つCD271については1と2をすでに終了し、3,を検討中である。そしてここまでの結果を国際研究雑誌に発表することができた。その他の分子についても現在、 CD271と同様の手順にて順調に解析が進んでいる。以上の理由より概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
CD271を解析したのと同様のin vitro実験系を用いて他の候補分子の解析も順調に進んでいる。課題は発見した知見を臨床応用する上で重要なin vivoでの解析である。これに関しては、慶応大学医学部先端医科学研究所、河上裕教授の助言のもと、ヒト化マウスモデルを用いた実験系を開発中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
解析すべき候補分子がCD271の他にも存在し同時に解析を進める事を予定していたが、実験が遅れて購入予定の物品が購入出来なかったためである。 残った候補分子についてもCD271と同様に解析する。T cellの状態評価のため、フローサイトメトリー解析も必須であり、蛍光色素ラベルした様々な抗体(1種類で1本5万円前後、10種類程度、合計約75万円程度)が必要である。T cellの活性化を解析するためにはサイトカインELISA kit(1枚5万円、合計10枚程度、合計約75万円程度)を使用する。候補遺伝子の機能を強制発現系で評価するためにレトロウイルスベクターを使った遺伝子導入を行う。レトロウイルス作成のために、トランスフェクション試薬を多く使用する(1回、3-4万円、実験5-6回、合計約15万円程度)。動物実験のためのfunctional grade抗体は、統計的に有効な個体数で実験を実施するには1実験あたり50万円を要する(2-3回実験予定、合計約120万円程度)予定である。さらに新たなin vivo実験系に関わる費用も生じる。これらのために26年度請求額と合わせて使用する。
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