研究課題/領域番号 |
25461689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
木庭 幸子 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (20436893)
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研究分担者 |
奥山 隆平 信州大学, 医学部, 教授 (80292332)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メラノーマ / Notchリガンド |
研究概要 |
【メラノーマにおけるNotchリガンドの発現】 培養メラノーマ細胞におけるNotchリガンド(DLL1, DLL3, DLL4)のmRNA発現を調べたところ、それぞれの発現は細胞株によりばらつきを示したが、DLL3とDLL4は培養ケラチノサイトより大部分が高かった。また、培養メラノサイトにもメラノーマと同程度に認められた。 【メラノーマと色素細胞母斑におけるNotchリガンド発現の比較検討】 本研究への参加の同意が得られたメラノーマ患者の腫瘍組織におけるNotchリガンドの発現を調べた。同時に色素細胞母斑の組織におけるNotchリガンドのmRNA発現も調べ、両者を比較したところ、色素細胞母斑に比べてメラノーマ組織ではDLL3の有意に発現が高かった(p=0.022)。DLL1発現は両者に差が認められなかった。DLL4については、中央値には3倍以上の差を認めたが、有意差が得られなかった。 【Notchリガンド過剰発現メラノーマ細胞の解析】アデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入し①形態②増殖③遊走能の3点について検討した。DLL1はコントロールと同様の形態で増殖にも差を認めなかった。DLL3とDLL4は50M.O.I.では細胞が突起を失って球形を示し、細胞死の所見と考えられた。この結果より、アデノウイルスによる過剰発現はメラノーマ細胞に対して毒性があることが示唆された。いっぽう、プラスミドベクターを用いてDLL3を導入したところ、上述の所見は認められず、細胞増殖に約30%の亢進が認められた。DLL3の遊走能への影響を検証するためscracth assayを行い、20%から70%の亢進を認めた。 以上より、Notchリガンドのうち、DLL3はメラノーマでの発現が有意に高く、in vitroでの増殖や遊走能の亢進からメラノーマの進展に関わっていることを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における、問題点としては、タンパク発現の検討ために、DLL1とDLL4の抗体を用いて免疫染色を試みたが、特異的な染色性は得られなかった点と、アデノウイルスを用いた過剰発現の細胞毒性が挙げられる。しかしながら、mRNA発現の検討および、プラスミドを用いた一過性遺伝子導入によりin vitroでのNotchリガンド過剰発現による影響は検討することができた。 以上より、本研究はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
【DLL3をノックダウンしたメラノーマ細胞の解析】 RNA干渉によりDLL3をノックダウンした培養メラノーマ細胞を用いて、①増殖②遊走能③コロニー形成能の3点について検討する。 【DLL3発現調節によるMAPKシグナルへの影響】 メラノーマの増殖に重要なMAPKシグナルにおけるNotchリガンドの役割を調べるために、DLL3を過剰発現もしくはノックダウンしたメラノーマ細胞におけるERKのリン酸化を調べる。 【in vivo腫瘍移植モデル】 DLL3安定的ノックダウンメラノーマ細胞を用いて、NOD-scidマウスもしくはNOGマウスに対して腫瘍細胞を皮下移植し、in vivoの腫瘍形成への影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
アデノウイルスベクターによる過剰発現モデルでの実験系に支障が生じたため、次年度使用額が生じた。 【in vitro実験】RNA干渉に必要なshRNAの購入。安定導入のためのプラスミドの設計を受託。レトロウイルスもしくはレンチウイルスを用いた安定導入株の樹立のための試薬と消耗品。real-timePCR試薬。ウエスタンブロット試薬。リン酸化ERKの抗体。細胞培養に要する試薬、消耗品。 【in vivo実験】免疫不全マウスの購入。動物実験施設使用料。マウス飼育費。
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