研究概要 |
本研究における目的は、mTORC1とオートファジーを介した、精神神経症状と色素異常に共通の機構解明し、ひいては治療法のない色素異常と精神神経病変に対する共通の治療法を確立することである。そこで、色素異常と精神神経病変を主症状とし、恒常的なmTORC1の活性化がおこる結節性硬化症(TSC)の白斑について検討した。 mTORC1の阻害剤であるラパマイシンの外用薬治療前後のTSC患者の白斑部の組織を組織化学的、電子顕微鏡的に検討し、TSC患者の白斑部では、メラニンの形成異常が起こっており、これらの異常はラパマイシン治療で改善することを確認した。前述した現象を確認するためにTSC1, TSC2 遺伝子のノックダウンを行い、TSC1 / TSC2モデルメラノサイトを作製し、各TSC1/2モデルメラノサイトをラパマイシン存在下、非存在下で培養し電子顕微鏡下で観察した。その結果、ラパマイシン非存在下ではTSC1/2モデルメラノサイトにはTSC患者白斑部と同様のメラニン形成異常が認められたが、ラパマイシン存在下で培養することによりこれらの異常は改善、消失した。さらに、TSC1/2モデルメラノサイトにおけるオートファジーの異常を検討するために、培養TSCモデルメラノサイトをLC3, P62に対する抗体で染色し,その発現量を検討した。その結果TSCモデルメラノサイトではLC3の発現が低下し、p62の発現が増加していた。さらに、各メラノサイトのメラニン産生量、MART1, PMEL17, MITF, TRP-1, TYR, DCT等の色素産生関連遺伝子、LC3, p62, WIPI1などのオートファジー関連遺伝子の発現も検討した。その結果TSCモデルメラノサイトではメラニン産生が低下し、色素産生関連遺伝子の低下、オートファジー関連遺伝子の異常も確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
25年度にメラノサイトで得られた結果が神経細胞においても認められるかどうかを検討する。さらに、細胞レベルで解析した現象を、モデル動物などのin vivoにおいて検証する。 神経細胞における検証として、株化細胞であるPC-12,及びヒトのアストロサイトーマ由来MOG-G-CM細胞にsiTSC1, siTSC2 を導入し、TSCモデル神経細胞、グリア細胞を作製し、メラノサイトと同様に、オートファジー関連物質の変化が認められるかをリアルタイムPCR、ウエスタンブロッティングを用いてRNA、蛋白両レベルに於いて検討する。さらに、siTSC1, siTSC2 を導入したこれらTSCモデル神経細胞、グリア細胞をラパマイシン存在下、非存在下で培養し、ラパマイシン投与によりモデルTSC神経細胞、グリア細胞で認められた異常が改善するかどうかを調べる。 動物レベルにおける検証として、TSC1、TSC2モデルマウス、および正常マウスの脳の活動性を調べ、正常に比して変化のある部分を同定する。ついで、ラパマイシンをマウスに内服投与し、活動部分の変化の有無を確認する。変化が認められた部分の脳組織標本を作製し、免疫組織化学的、電子顕微鏡的にオートファジーの異常の有無を検討する。 TSCモデルマウスで温覚、痛覚などの異常の有無を検討し、組織学的に末梢神経におけるオートファジーやmTORC1の異常の有無を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
発表を予定していた海外での学会への出席をとりやめることになった。 半年から1年以上かかる実験動物の作製,抗体の作製等は25年度中にオーダーしていても、完成後の支払いのため、支出が生じるのが翌年以降になった。 1,200,000円のうち,900,000円は動物や抗体が導入された時点での支払いに使用。300,000円は25年度の学会出席費に使用予定
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