研究課題
本研究の目的は、mTORC1とオートファジーを介した、精神神経病変と色素異常に共通の機構を解明し、治療法のない色素異常と精神神経病変に対する共通の新規治療法を確立することである。最近、オートファジーの異常が、精神神経病変の原因になる事が報告された。しかしながら白斑におけるオートファジーの関与は不明である。ところで、TSC遺伝子の異常の結果、オートファジーの要であるmTORC1が恒常的に活性化する為に、全身に多発性の白斑を生じると同時に癲癇、自閉症、発達障害等の中枢神経症状を呈する遺伝性疾患、結節性硬化症(TSC)、がある。我々は、臨床的にはmTORC1阻害剤の全身投与でTSCの自閉症が、局所投与(外用)で白斑が軽快する事を報告した。また、TSCの白斑部では、組織学的には、メラノサイトは存在するがメラニン形成に異常が認められ、TSC遺伝子をノックダウンしたメラノサイトでも、メラノソームの数が減少し、それがmTORC1阻害剤の投与で回復する事を示した。さらに、TSC遺伝子をノックダウンしたメラノサイトでは色素の減少とLC3-II発現の増加が認められ、これらの異常は飢餓やシロリムスによって誘導されるmTORC1関連性のオートーファジーの抑制でも、LC3の過剰発現やverapamilによって誘導されるmTORC1非関連性のオートーファジーの抑制のいずれによっても回復する事を示した。逆にメラノサイトにおいて、オートファジーに不可欠なATG7遺伝子をノックダウンしてオートファジー抑制することによって色素の増加が認められる事も確認した。以上より、メラノサイトにおけるオートファジーの異常な活性化が、TSCの白斑の形成に関与している事が解明できた。
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