研究課題
薬疹は主にヒトの臨床検体を用いて研究が行われているが、1つの薬剤で薬疹を発症する患者数は限られており、薬疹の病態解明には、薬剤を用いた薬疹動物モデルの樹立が重要と考えられる。この研究では、T細胞受容体が認識する自己抗原由来のペプチドとその改変ペプチドに対する結合能の違いを利用して、ヒトで薬疹を起こす薬剤が結合能に及ぼす影響を検討することで、特定のT細胞受容体が、薬剤により活性化するメカニズムを解明を目指した。さらに薬剤と改変ペプチドの組み合わせを用いて動物を免疫することで、薬剤を用いた薬疹の動物モデルの樹立を目指した。K5-mOVA X OT-Iダブルトランスジェニックマウスを交配により作成した。OT-Iマウスの脾細胞に、OVA由来のMHC class Iリガンドあるいは、それらのアミノ酸の一部を置換した改変ペプチドリガンドを段階希釈して添加し、インターフェロンγ産生細胞の割合をプロットし、ペプチドごとの結合能を把握した。さらにこの実験系にヒトで薬疹を起こすことが知られる薬剤を添加して培養することで、約150種類の薬剤についてOT-I細胞が反応する薬剤のスクリーニングを行った。前年度でインターフェロンγ産生細胞がみられた2種類の薬剤についても、OT-I細胞による反応について追加検討をおこなった。この研究を通して、マウスT細胞が薬剤に対して反応しインターフェロンγ産生について、ヒトで薬疹の原因薬剤となることが多い薬剤について検討を行ったことにより、薬疹の動物モデルを樹立する上で重要となるスクリーニング法を確立できたことは意義があり、今後の薬疹の研究領域の進歩の上で重要と考える。
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