研究課題
基盤研究(C)
生命の危険を伴うこともときにある膿疱性乾癬(以下、GPPと略す)の発症原因は未だ不詳のままである。近年海外より本症をひき起こす原因遺伝子の一つとして、インターロイキン8に依る炎症反応を抑える役目をするIL36RN遺伝子の異常が報告されたので、私たちもこの遺伝子を含め、網羅的遺伝子検索を進めた。血縁関係にない31例のGPP患者とGPP多発家系1家系を対象とした。末梢血由来のDNA試料を用意して、当該遺伝子の遺伝子解析を行い、以下の結果を得ることができた。(1)先行皮膚病として尋常性乾癬を有していないGPP患者群では11例中9例(=81.8% )にIL36RN 遺伝子の変異を認めたのに対して、尋常性乾癬が先行するGPP患者群では20例中わずか2例(=10.0% )のみに同遺伝子の変異を認めた。この差は統計学的に有意であった(p<0.001)。(2)IL36RN遺伝子の変異の遺伝パターン様式は劣性遺伝を示した。(3)家系分析から、IL36RN遺伝子変異は、HLAハプロタイプと連鎖して親から子へ伝わることが明らかとなった。今回の研究から、臨床的にはインターロイキン8の過剰産生に起因するGPPとして同じようにみえても、少なくとも尋常性乾癬が先行するタイプとそうでないタイプのGPPでは、発病原因としての遺伝学的背景に違いがあることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究成果の内容を投稿した学術雑誌(J. Investigative Dermatology)の誌上で、皮膚難病であるGPPの遺伝要因が特定されたことは極めて画期的であるとの好評(by Francesca Capon)を得た。
初年度の研究成果から、GPPの遺伝要因全体の30~40パーセントの領域をカバーすることができたものと推定されるが、残りの60~70パーセントの部分については依然として未解決のままである。次年度以降の研究では、この残りの部分を説明できる原因遺伝子はどのようなものであるのかを探索するために、網羅的遺伝子解析を継続していく予定である。さらに、次世代型遺伝子解析法の新技術を導入して遺伝子探索の迅速化・効率化を図り、GPP原因遺伝子の単離・同定に向けた国際競争を勝ち抜くつもりである。
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Journal of Investigative Dermatology
巻: 133 ページ: 2514-2521
10.1038/jid.2013.230
山口医学
巻: 62 ページ: 199-204