研究実績の概要 |
1.ゲノム解析による膿疱性乾癬遺伝子素因の全体像の解明 膿疱性乾癬の患者群を2群に分類した。尋常性乾癬が先行する膿疱性乾癬のタイプと、最初から膿疱性乾癬として発症するタイプである。後者ではサイトカインのIL-1の分泌を負に制御するIL36RN遺伝子に変異が有意に高頻度でみられるのに対し、前者の場合はCARD14遺伝子と称される遺伝子に変異が生じ、結果として好中球を活性化してしまうことになってしまうことが推測された。すなわち、膿疱性乾癬とひと言でいってはいるが、その発症の遺伝学的メカニズムは異なるものであることを証明した(J.Invest.Dermatol.,134:1755-1757,2014)。この事実は、本症の治療戦略を策定していくにあたり、両群で治療応答性に差が出る可能性があることを示唆する。 2.マラセチア菌叢解析による膿疱性乾癬発症の環境因子の探索 乾癬患者の皮膚病変部には一体どのような病原微生物が生息しているのかを知るために、今回真菌に限って調べたところ、マラセチア(特にMalassezia restricta)がカンジダ等他の真菌類より有意に多く生息していることを明らかにした(J.Dermatol.,42:166-170,2015)。 以上のとおり、平成26年度の研究成果(1及び2)から、膿疱性乾癬の発症には少なくとも二つの異なる疾患感受性遺伝子(IL36RN及びCARD14)が存在すること及び乾癬病変部皮膚にはマラセチアが多く生息していることが明らかとなり、本症の根本的な治療法の開発への手掛かりを得ることができた。
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