研究実績の概要 |
膿疱性乾癬の発症に関する疾患感受性遺伝子群の構造と機能を明らかにすることを目的として、多施設共同研究の形態をとり、稀少かつ難治性である本症患者を全国レベルで収集し(n=31)、網羅的に原因遺伝子群の探索を前年度にひき続き行った。臨床的に、本症は尋常性乾癬が先行し、次いで膿疱性乾癬を発症してくるタイプと、最初から膿疱性乾癬として発症してくるタイプの二つに大別される。ゲノム解析の結果から、前者はCARD14遺伝子の異常に由来するのに対し、後者はIL36RN遺伝子の異常によること、が判明した。なお、CARD14遺伝子の異常は、関節リウマチに似た臨床像を呈する関節症性乾癬でも見られることを確認した(Rheumatology,54:197-199, 2015)。 リンパ球を含む免疫担当細胞から分泌される数々の液性因子(サイトカイン)、特に本症の場合はIL8の産生過剰が、炎症性疾患である本症の病因論の上から重要である。そして、CARD14およびIL36RNの両遺伝子は、このIL8産生の制御に深く関与している。そうであるならば、これらの発症責任遺伝子の異常のあり方により、その遺伝子効果に違いがあるのか、という疑問がでてくる。民族間での比較研究が進んでいるIL36RN遺伝子に標的を絞り、その遺伝子効果の違いを探索する研究を開始した。予備的研究の成果によれば、遺伝子のどの部分に遺伝子の構造的異常があるかによって遺伝子により作られてくる蛋白に質的かつ量的な違いがある可能性が高いことが示唆される結果を得ることができた。以上の結果は、わが国における指定難病に認定されている本症の治療戦略の方策を決める上で極めて重要となってくる。 これまでの研究の成果は、日本皮膚科学会雑誌に掲載された膿疱性乾癬の診療ガイドライン(改訂版;2015年)に記載することができた。
|