研究課題/領域番号 |
25461701
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
青木 茂久 佐賀大学, 医学部, 准教授 (10448441)
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研究分担者 |
戸田 修二 佐賀大学, 医学部, 教授 (80188755)
三砂 範幸 佐賀大学, 医学部, 准教授 (90199977)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
悪性黒色腫(メラノーマ)は最も悪性度の高い皮膚癌であり、進行すると有効な治療法がなく、致死的である。近年、悪性黒色腫の罹患率の増加と皮下、内臓脂肪組織の増加を基盤とする肥満との関連が疫学的に示唆されているが、脂肪組織が悪性黒色腫にどのような影響を与えているか、その詳細は不明である。一般に、悪性黒色腫は皮膚表皮内で発生し、真皮 → 皮下脂肪組織へと浸潤し(図1)、全身諸臓器へ転移する。それ故に、脂肪組織が悪性黒色腫細胞の生存、増殖、遊走、浸潤、転移に活発に影響していると予想される。しかし、皮下及び内臓脂肪組織が悪性黒色腫細胞に与える直接的な影響を解析した研究は国内外にはなく、その詳細は不明である。本研究では、悪性黒色腫細胞の生存、増殖、遊走、浸潤における脂肪組織の役割とその制御機構を解明する。
本年度は、脂肪組織による悪性黒色腫の増殖、遊走における影響を形態的および蛋白発現を中心に病理組織学的、Western blottingを用いて解析した。その結果、脂肪組織は悪性黒色腫細胞の細胞増殖を促進し、アポトーシスを抑制する可能性があることを見出した。また、この現象にはMAPK系シグナルが関与するをことを見出した。 本年度、新たに開発した生体の微小環境を模した器官培養系では、この脂肪組織が有するパラクライン効果は更に増強し、悪性黒色腫の細胞増殖を促進し、メラニン産生を含めた細胞機能の調節にも関与する可能性があるをことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究成果に引き続き、本年度においても悪性黒色腫と脂肪組織におけるパラクライン効果の一端(MAPK系)を解明することができた。しかし、一部で形態学的な解析結果と蛋白発現の解離がみられた。これは、形態的な解析には三次元培養を用い、蛋白解析には二次元培養という培養条件の違いが大きく寄与すると考えられる。混合培養系では免疫染色を用いるしか、個々の細胞での蛋白発現を解析する手段がない。この免疫染色は、蛋白質の定量は困難である。一方、二次元培養で単一細胞を培養し、western blotting等で蛋白の定量を行うが、この方法では複数の細胞種の混合培養は困難である。それぞれの実験系の限界が、形態学的解析結果と蛋白発現結果の解離を来したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、我々は二次元培養と三次元培養の欠点を克服する新規三次元培養法を開発した。 H27年度では、この新規三次元培養法を用いて、免疫組織化学、Western blot 、real-time RT-PCR、ELISA等を用いて解析し、癌細胞の生存、増殖、遊走、浸潤における皮下、内臓脂肪組織の影響とその相違を明らかにする。さらに、cDNA microarrayによる網羅的遺伝子解析と癌細胞への候補遺伝子産物の蛋白やその阻害剤の投与実験により、脂肪組織誘導性の癌細胞の細胞動態の仲介因子を同定する。平成27年度は、これまでの実験から予想される癌細胞のアポトーシス、増殖、遊走や浸潤の促進因子や防御因子を癌細胞単独培養系、癌細胞-脂肪組織混合培養系や癌細胞移植マウスに投与し、上記現象の促進及び阻害効果を比較検討し、悪性黒色腫の新規分子標的治療薬としての可能性を追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、生体の微小環境を再現する新規培養法を開発した。この培養を用いたサンプルを次年度にまとめて解析する為に、本年度の予算を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度繰り越した助成金は、次年度の免疫組織化学、Western blot 、real-time RT-PCR、ELISA、cDNA microarrayによる網羅的遺伝子解析費用として使用する。
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