研究概要 |
悪性黒色腫 (メラノーマ) は世界的に増加傾向にある. メラノーマは極めて転移しやすく遠隔転移を起こしたメラノーマはきわめて予後が悪い. 本邦ではdacarbazineとインターフェロン-β (IFN-β) を用いた全身化学療法が行われているが, 奏効率は低く奏効性は症例によって異なる. DNA脱メチル化剤はIFN-βによるメラノーマ細胞のアポトーシス誘導を亢進するが, その作用機序として, IFN感受性に関わる遺伝子のエピジェネティックな不活化をDNA脱メチル化剤が解除する分子機構が推測される. メラノーマにおいても, 複数のmicroRNA (miRNA) 遺伝子がメチル化によって不活性化されていることが報告されている. しかし, メラノーマにおけるmiRNA制御のメカニズムは不明な点が多く, メラノーマで報告されているmiRNAと転移リスクとの関連は不明である. われわれはDNA脱メチル化剤5-aza-2’-cytidine (5-aza-dC) およびIFN-βの複合効果によってアポトーシスが誘導されるメラノーマ細胞株 (TXM18) を用いて, 細胞死に関係するmiRNAを網羅的に解析した. 5-aza-dC とIFN-βによって発現が5倍以上誘導されたmiRNAは664種中23種で, 上流5 kb以内にCpGアイランドが存在したのはmiR-203, miR-503, miR-618, miR-886, miR-941, miR-596の6種類であった. これらのうち, 腫瘍特異的かつ高頻度なCpGアイランドのメチル化が認められたのはmiR-596であった. MSPおよびパイロシークエンス法を用いてmiR-596のCpG islandのメチル化を解析した結果, 検討した全てのメラノーマ細胞株において高度なメチル化が検出された (平均メチル化レベル88.0%). 一方, 正常メラノサイト細胞ではメチル化はより低レベルであった (平均メチル化レベル17.3%). miR-596の細胞内導入によって, メラノーマ細胞 (TXM18, AK-1) の増殖は40~50%抑制され, 癌抑制遺伝子としての活性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
上流5 kb以内にCpGアイランドが存在するmiR-203, miR-503, miR-618, miR-886, miR-941, miR-596のメラノーマ細胞に対する増殖抑制を検討する. さらに, メラノーマの手術検体におけるこれらmiRNAのメチル化を順次解析してゆく.
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