研究実績の概要 |
本研究の最終年度では、アトピー性皮膚炎(AD)およびそう痒性皮膚疾患において、コラーゲントリペプチド(CTP)の効果をヒトおよび培養表皮細胞を用いて明らかにすることを目的とした。前年に引きつづき培養ケラチノサイトにCTPを炎症性サイトカインやTh2サイトカインとともに添加し、培養細胞の炎症性サイトカインや神経成長因子(NGF)および神経反発因子であるセマフォリン3A(Sema3A)産生に及ぼす影響を検討した。その結果、CTPはIL-13, TNF-α、IFN-γを同時に添加することにより亢進したケラチノサイトのTARC, MDS, TSLPのmRNAの発現およびタンパクの発現を減弱させた。また、上記培養上清を用いたchemotaxis assayではCTPは末梢血単核球の走化性を抑制した。 一方、NGFおよびSema3A産生には有意な影響はみられなかった。CTPを細胞内に取り込むペプチドトランスポーターについは小腸上皮に発現していることはこれまでに報告されていたが、われわれは今回ケラチノサイトにも発現していることをmRNAレベルで明らかにした。AD患者への投与は1ヶ月では明らかな効果が見られなかったため、投与期間が短かったことが問題と考え、3ヶ月に延長して投与した。患者を2群にわけ、ダブルブラインド方式で通常量のCTPと高用量のCTPを投与し、かゆみや皮膚炎への効果やTARC等のバイオマーカーの変化を比較した。それぞれ12名の患者に投与し、高用量CTP投与群で低用量CTP投与群より明らかなかゆみの抑制をみた。今後はCTPの細胞内伝達経路について解明する予定である。
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