研究課題/領域番号 |
25461708
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
菅原 弘二 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50634078)
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研究分担者 |
鶴田 大輔 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90382043)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カンナビノイド受容体タイプ1 / 瘢痕性脱毛 |
研究実績の概要 |
これまでの一連の研究で、カンナビノイド受容体type Iアゴニストのヒト毛包培養系への添加は毛包幹細胞の増殖能を上昇させ、その数を増加させることが分かった。また、その反応はカンナビノイド受容体type Iアンタゴニストの共添加により抑制された。さらに、カンナビノイド受容体type Iの遺伝子ノックダウンをヒト毛包培養系で施行したところノックダウン群では対照群に比較して、CK15陽性の毛包幹細胞の数が減少しており、そのアポトーシスが誘導されることが分かった。このメカニズムをさらに詳しく研究するために、PI3Kの阻害剤であるwortmannin、MEK阻害剤の一つであるPD98059、p38 MAPKの阻害剤であるSB20358をヒト毛包培養系に添加して、カンナビノイド受容体type IアゴニストがCK15陽性ヒト毛包幹細胞に与える作用にどのような影響を与えるかの研究を行った。その結果、カンナビノイド受容体type IアゴニストであるACEAがCK15陽性ヒト毛包幹細胞の数を増加させる作用は、MEK阻害剤であるPD98059の共添加群でのみ、正常レベルまで抑制された。この結果はカンナビノイド受容体type Iシグナルがヒト毛包幹細胞に与える影響はPI3Kやp38MAPKではなくMEKを介していることを示唆する。 次に毛包幹細胞がダメージを受けたことによって生じるといわれている瘢痕性脱毛の患者さんの実際の組織サンプルを用いカンナビノイド受容体type Iのバルジ領域での蛋白発現がどのように変化しているのかを免疫組織化学染色にて評価したところ、カンナビノイド受容体type Iのバルジ領域での発現は瘢痕性脱毛症患者で有意に減少していた。 これらの事実はヒト毛包の幹細胞の維持にはカンナビノイド受容体type Iを介したシグナルが重要であることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、カンナビノイド受容体type Iがどういったシグナルを介しているかをヒト毛包培養系の研究を行うことによって一部示したが、細胞レベルではまだおこなえていない。 しかし、実際のヒトの毛包疾患でカンナビノイド受容体type Iシグナルが毛包の幹細胞に対して重要な役割を担っていることを示唆する結果は得ることができており、本研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はカンナビノイド受容体type Iシグナルがヒト毛包幹細胞に与える影響についての研究を培養ヒト毛包幹細胞で行い、ヒト毛包培養系で得た結果をより詳細に検討する予定。 そして、カンナビノイド受容体type Iを介したシグナルを修飾し、実際の臨床医学への応用可能な分子(化学物質)に関して調査する。実際には候補と推定される化学物質を用いたヒト毛包器官培養を行い、毛包幹細胞の増殖、分化、死に与える影響に関して研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に使用するヒトの毛包組織が当初予想していた量よりも少なく、そのために培養物品および各種抗体の購入量が見込みよりも下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究に用いるヒト毛包組織量を増やし、また細胞培養も行う予定であるため、使用する培養物品および化学物質、各種抗体が当初の予定量以上であることが見込まれ、今回の次年度使用額をそのために充てる予定である。
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