これまでの研究で、カンナビノイド受容体タイプI(CB1)シグナル伝達系がMEKを介してヒト毛包幹細胞の増殖能を上昇させることが分かった。さらに、毛包幹細胞がダメージを受けることに発症する難治性脱毛症の一つである瘢痕性脱毛症患者の毛包では毛包幹細胞領域(バルジ領域)でCB1の発現が健常人と比較して有意に低下している結果も得られた。 次にCB1が毛包以外の表皮の幹細胞にどのような影響を与えるのかを調査するために、表皮より抽出した表皮幹細胞にCB1アゴニストであるACEAを投与し、その増殖能および細胞死に関しての評価を行った。その結果、ACEAは表皮幹細胞の増殖能を有意に上昇させることが分かった。さらに、ヒト皮膚を用いた創傷治癒モデル培養系にACEAを投与して培養したところ、ACEAは創傷治癒を促進する作用があることを示唆する結果が得られた。 これらの事実は、CB1はヒト毛包のみならず表皮幹細胞の維持にも重要な役割を担っていることを示唆する。
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