研究課題/領域番号 |
25461714
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
照井 正 日本大学, 医学部, 教授 (30172109)
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研究分担者 |
岡山 吉道 日本大学, 医学部, 准教授 (80292605)
葉山 惟大 日本大学, 医学部, 助手 (40647187)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マスト細胞 / 慢性蕁麻疹 / 自己抗体 / 神経ペプチド |
研究実績の概要 |
抗FcεRIα鎖(以下α鎖)自己抗体の解析にはELISAが従来使用されており、我々の以前の研究でも健常人と慢性蕁麻疹患者ではELISA法では有意差がなかった。これはα鎖細胞外ドメインを分泌するCHO細胞の培養上清から精製した可溶性α鎖蛋白質を固相化したものと細胞膜表面上に発現している膜型のα鎖蛋白質とは抗α鎖自己抗体との結合性が同一ではない可能性が考えられる。この仮説を検証するために本研究では、慢性蕁麻疹(CSU)患者における抗α鎖自己抗体価をELISAおよびフローサイトメトリー(以下FC)を用いて解析を行った。膜型のα鎖蛋白質に対する自己抗体価は細胞膜上にFcεRIαを発現するCHO細胞を用いてFCで測定した。自己血清皮内テスト(ASST)の結果との関連についても解析した。結果としてELISAで解析した抗α鎖自己抗体価は、CSU患者の方が健常者よりも有意に抗α鎖自己抗体価(吸光度)が高かった。CSU患者における自己血清皮内テスト陰性と陽性の患者間に統計的に有意差はなかった。FCで解析した抗α鎖自己抗体価(MFI値)は、健常者とCSU患者、CSU患者におけるASST陰性と陽性の患者間に統計的に有意差はなかった。このことからELISAによる抗FcεRIα鎖抗体検出法はCSU患者の診断に有用である可能性が示唆された。ASSTにおいてはα鎖自己抗体の有無は関与していない可能性が示唆された。またFCで健常者とCSU患者の間に抗α鎖自己抗体価の有意差がないということは、健常者もCSU患者と同等にα鎖自己抗体を持つということが考えられる。 また我々は昨年度までに神経ペプチドの新規受容体であるMrgX2が神経ペプチドのマスト細胞の脱顆粒において重要な役割を果たすことを示した。本年度はさらに塩基性物質である好酸球顆粒(MBP,EPO)もMrgX2を介してマスト細胞の脱顆粒とサイトカイン産生を誘導することを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗FcεRIα鎖自己抗体の解析は検体が十分に集まり、前年度と比べて進んでいる。解析結果は平成27年6月に開催されるWorld congress of dermatologyで発表予定である。神経ペプチドの受容体であるMrgX2の解析も十分に進んでおり、研究成果をまとめ欧文誌であるJournal of Allergy and Clinical Immunologyに投稿し掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
FcεRIαにはD1とD2の2つのドメインがあり、それぞれCRA1とCRA2が結合する。α鎖細胞外ドメインを分泌するCHO細胞の培養上清から精製した可溶性α鎖蛋白質を固相化したELISAでCRA1、CRA2をそれぞれ一次抗体として検出すると、CRA1の吸光度は高値、CRA2は低値であった。これはELISAの固相化の際、使用しているプレート底面には疎水性の部分が結合しやすいので、より疎水基の多いD2領域が高率に底面に結合するためにCRA2の検出が低くなったと思われる。仮に健常者のα鎖自己抗体はD2領域に結合しやすい性質を持ち、CSU患者はD1領域に結合しやすいとすると、ELISAでは健常者のα鎖自己抗体はCSU患者のそれより結合しづらいため低値となるので、ELISAでは有意差が出る。一方、FCではドメインが露出しているのでD1、D2に関係なく結合できるようになるため有意差がなくなると考えることができる。この仮説を検証するために、今後はRBLのキメラを①ヒト由来FcεRIα陰性、②ヒト由来FcεRIα陽性、③ヒト由来D1+ラット由来D2、④ラット由来D1+ヒト由来D2の4種類を作製し、健常者及びCSU患者の血清を用いて脱顆粒試験を行う予定である。 MrgX2に関しては皮膚マスト細胞においてMrgX2発現の調節因子を検索する。皮膚炎症性疾患では多数のサイトカインが放出されるが、これらがマスト細胞上のMrgX2の発現を増強するかを調べる。予備実験においてTSLPやIL33が候補に挙がっており、今後RT-PCRなどで解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や細胞の培養液でほぼ使用したが、わずかに残存したため次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
フローサイトメトリーなどの機械は保有しているので、引き続き実験用の試薬や細胞培養液などの購入を行う。
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