研究課題
基盤研究(C)
末梢血単核球(PBMo)にGM-CSF, IL-4, TGF-β1を加え培養すると、培養3日目にE-cadherin (E-cad)が発現してくる。そのE-cad発現細胞をE-cad-coatedプレート上でさらに3日間刺激培養すると、DC-SIGNの発現は認められずLangerinのみが発現した表皮ランゲルハンス細胞に酷似した細胞(moLC)が得られた。この細胞は、TLR2ならびにTLR3は発現しているもののTLR4が欠損していること、またLCに特有な構造であるBirbeck顆粒の発現が観察されることなどより、皮膚より直接採取したPrimary LCと酷似した特徴を有していた(この結果はEur. J. Immunol., 43(1): 270-280, 2013に掲載されたが、その際本研究成果に関し詳細なCommentary(Eur. J. Immunol., 43(1): 34-37, 2013)が付記され高く評価された)。また、この誘導方法の詳細に関して別途報告した(JNMS 2013; 80(2):88-89)。得られたmoLCはLangerinの発現に関し高発現のものと低発現のものとが混在している細胞集合体であるのに対し、皮膚より直接採取したLCはLangerinの発現が比較的均一であった。そこでLangerinがより均一で強発現したmoLCの誘導法を確立するため、臍帯血由来のCD34陽性細胞にGM-CSFとTNF-αを添加培養すると、E-cadを発現したLC様の細胞が出現するとのStroblらの報告(Blood, 96:4276, 2000)に則り、moLCにTNF-αを様々な濃度で添加培養し、Langerinがより高発現化する結果を得るとともに、現在臍帯血にE-cad-coatedプレート用いたLC誘導法にも着手している。
2: おおむね順調に進展している
末梢血単核球を用い誘導されたランゲルハンス細胞(moLC)は皮膚組織より直接採取したLCに比べLangerinの発現がやや不均一であったため、Stroblらの報告に則りmoLC誘導系にTNF-αを様々な濃度で添加培養することによって、Langerinの発現が高いより均一なmoLCを得ることが出来た。このmoLCには表皮内のケラチノサイト(KC)と同様E-cadが発現しており、KCと強固に結合しているが、moLC上に発現したTLR2やTLR3をpeptide glycan (PG)やpoly(I:C)などそれぞれの特異的リガンドで刺激すると、結合分子E-cadの発現が低下し、同時にTLR4が発現することを確認した。
LCには表皮常在菌群由来の糖脂質ペプチドグリカン(PG)や結核菌由来のリポアラビノマンナン(LAM)、さらには申請者らが同定したピロリ菌ウレアーゼ(Infect. Immun. 79:4791, 2011)などのTLR2のリガンド及び各種ウイルス複製過程で認められるpoly(I:C)などのdsRNAに応答するTLR3は発現しているものの、血管内に侵入し敗血症を惹起するLPSに応答するTLR4は発現していない。そこで、表皮内に侵入した種々の病原微生物に対するLCの応答性を解明するため、まずTLR2あるいはTLR3のリガンドでLCを刺激した場合TLR4の発現が誘導されるか否かを検討する。また、常在菌の侵入ならびにウイルスの侵入に伴って起こる、LCの形態ならびに機能的な変化をE-cad、Langerin、などの表面分子の発現の変動を含め検討する。そして、E-cadやLangerinの発現の変動により、KCからの束縛から逃れたLCが表皮から移動し、皮下組織の免疫担当細胞に捕捉した情報提示をする可能性を調べ、表皮内に棲息し体表面のバリアを形成するLCの生物学的な存在意義を探る。また一方、LCが表皮内で接触するもう一つの重要な因子は、発癌に伴い発生した癌細胞である。本研究では、腫瘍細胞と接触したLCが起こす形態・機能的な変化を解明し、腫瘍制御にLCがどのように関与するかを検討すると同時に、LC活性化による腫瘍制御法の可能性を探る。
当初予定していた物品を入手することができず、次年度に購入をずらしたため。平成26年度の予算と上記の繰越額とを合わせた予算で必要な物品等を購入、研究を実施する予定である。
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