研究課題/領域番号 |
25461715
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
高橋 秀実 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40221361)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Langerhans cells / Dendritic cells / Langerin / E-cadherin / TLRs / cord blood |
研究実績の概要 |
独自に開発したE-cadherin (E-cad)-coated plate(住友ベークライト株式会社と共同特許を申請中)を用いることによって、末梢血単核球(PBMo)より異物捕捉伝達能を有したDC-SIGNの発現は認められず、異物捕捉消化能を有したLangerinのみを発現した樹状細胞(DC)である表皮ランゲルハンス細胞(LC)に酷似した細胞(moLC)を誘導することが出来た(Eur. J. Immunol., 43(1): 270-280, 2013)。このmoLCは、TLR2ならびにTLR3は発現しているもののTLR4が欠損していた。そこで、TLR2およびTLR3のリガンドであるpeptide-glycan(PG)やpoly(I:C)で刺激すると、Langerin及びE-cadの発現が消失し、代わりにDC-SIGNならびにTLR4が発現したDC様の細胞に変化したが、TLR4のリガンドであるLPSで刺激した場合には特に変化は認められなかった。また、moLCをE-cad-coatingプレートあるいはE-cad抗体で刺激(cross-linking)した場合には、このような変化は全く認められなかった。以上より、LCは侵入異物によるTLR2あるいはTLR3からの刺激により活性化し、表皮内の移動能力を獲得したDC様細胞に変化するものと推測された。一方、表皮より直接採取したLCはLangerinの発現が比較的均一であったが、末梢血より誘導したmoLCでは、Langerinの発現に関し高発現のものと低発現のものとが混在していた。そこでLangerinがより均一で強発現したmoLCの誘導法を確立するため、日本医科大学倫理委員会で使用承認を得た臍帯血の解析結果をもとに、純化した臍帯血由来CD34陽性細胞を用いたLC誘導の研究を進め、moLCとの比較検討を展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に開発した手法(Eur. J. Immunol., 43(1): 270-280, 2013)を用いて、PBMoよりLangerinのみを発現したDCであるLCに酷似したTLR4欠損細胞(moLC)が誘導できることを確認した。このTLR4欠損細胞(moLC)をTLR2およびTLR3のリガンドであるpeptide-glycan(PG)やpoly(I:C)で刺激すると、Langerin及びE-cadの発現が消失し、DC-SIGNならびにTLR4が発現したDC様の細胞に変化することを見いだした。この際、E-cadを発現したmoLCをE-cad-coatingプレートあるいはE-cad抗体で刺激した場合には、このような変化は全く認められなかったことから、表皮内にE-cad陽性ケラチノサイトとともに固定化されたLCは、E-cadを介した刺激によって移動可能なE-cad陰性細胞に変化することはできず、TLRを介した異物刺激によってのみ移動可能状態を獲得することが判明した。現在、LC活性化に伴う皮膚の慢性炎症状態を反映するTNF-αがこうした状況下で高値を示すことに着目し、TNF-αがLCに及ぼす影響を検討している。一方、倫理委員会での使用承認を得た後、採取したばかりの臍帯血をFlow Cytometry で解析した結果、その大部分はCD34陰性、CD14陰性でCD3陽性のT細胞であった。また、LC前駆細胞と考えられるCD34陽性細胞はCD14陰性であり、それから誘導した細胞は、langerinは陽性DC-SIGNは陰性、TLR4が陽性であったことから、TLR4陰性の皮膚LCと酷似した細胞を臍帯血から誘導するための方策を検討している。その際、臍帯血に含まれたT細胞群が臍帯血よりLCを誘導する過程で及ぼす影響を考慮し、研究を展開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
LC上にTLR4が発現していない理由をさらに解明するため、またTLR2あるいはTLR3のリガンドでLCを刺激した場合、LCに特有のE-cad、Langerinの発現が低下し表皮内を移動可能な状態となる理由などを総合的に考慮し、LCが体表面バリアのなかに配置されている意義に関して総合的に考える。その際、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの難治性皮膚炎に対し、副腎皮質ホルモン剤を塗布した場合、表皮バリアの中核として存在するLCが減少する理由、皮膚損傷に伴う皮膚修復において有棘層に局在するLC が損傷の状況を認識しその修復の発令を促すとする最近の報告(Nat. Immunol. 15:177-185, 2014)を念頭に置き、さらなるLCの存在意義と各種疾病との関わりについて検討を重ねる。また一方において、LCが表皮内で接触する可能性のある癌細胞(上皮内腫瘍)に着目し、腫瘍細胞と接触したLCが起こす形態・機能的な変化を解明し、皮膚結核の患者さんには癌が少ないとする事実を考慮した上で、LC活性化による腫瘍制御法の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた物品ならびに動物を入手することが出来ず、次年度に購入時期をずらしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の予算と上記の繰越額とを合わせた予算で必要な物品等を購入し、研究を実施する予定である。
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