研究課題
今年度は、まず、ケラトアカントーマ(Keratoacanthoma: KA)に関して、われわれの病理組織学的クライテリアを用いて、多数例の臨床病理学的検討を行った。その中で、クレーター状上皮性腫瘍の中には、およそ20%程度KAとは鑑別すべきクレーター状疣贅と診断すべき症例が含まれていることを明らかにした。また、全体の56.3%はKAであったが、KA内に悪性腫瘍を伴った例が10%強あり、それ以外のクレーター状を呈する悪性腫瘍が10%程度含まれていることを報告した。さらに、膵臓癌、大腸癌など様々な悪性腫瘍において高発現していることが報告されており、oncofetal proteinとして知られているmRNA結合蛋白質の一種であるInsulin-like growth factor 2 mRNA-binding protein-3 (IMP3)に注目してKAと有棘細胞癌(SCC)における発現や局在について病理組織標本を用いて免疫組織化学的に解析すると共に、細胞生物学的にSCC細胞株を用いてIMP3の細胞機能に対する役割について解析した。免疫組織学的解析からIMP3は正常皮膚では顆粒層と内毛根鞘に発現していることが認められ、SCC症例では約67%でIMP3陽性を認めた。一方、KA症例では全症例においてIMP3は陰性であった。またSCC症例ではIMP3陽性症例の方がIMP3陰性症例に比べてKi-67labeling index値が高値を示した。さらに細胞生物学的解析からIMP3がSCCの細胞増殖、細胞遊走・浸潤などを制御することが明らかとなった。これらの結果からIMP3は皮膚SCCの細胞増殖や細胞浸潤などの生物学的特徴に重要な役割を担っており、新しい治療標的やKAとの鑑別に有用な分子マーカーと考えられた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
The Journal of Dermatology
巻: 43 ページ: 0-0
10.1111/1346-8138.13331
10.1111/1346-8138.13390
International Journal of Oncology
巻: 48 ページ: 1007-1015
10.3892/ijo.2016.3323