研究実績の概要 |
1)C57BL/6 (wild type: WT)をTNP-IgEで継続的に授動感作しTNP-OVAを皮内投与することでマウス痒疹病変の誘導に成功した。これを利用しC57BL/6マウス由来のSTAT6 (-/-)マウスに痒疹病変を誘導したところ極めて意外なことに反応が増強した。局所のサイトカインとしては、TSLPとIL-33産生がSTAT6 (-/-)マウスで高まっていた。増強した病変部では好塩基球浸潤がWTマウスに比して目立っていたが、その一方で好酸球浸潤は消失していた。さらに炎症悪化にもかかわらずIL-31と掻破行動は減弱した。つまりこのモデルでは炎症と好塩基球は相関するが、好酸球浸潤や掻破には影響をうけないことが判明した。また痒みは好酸球浸潤に左右されることが示唆された。 2)ヒト痒疹に関しては、A:結節性痒疹、B:多形慢性痒疹およびC:蕁麻疹様紅斑と痒疹丘疹がみられる分類不能な痒疹群について解析した。分類不能群はIL-33, TSLP発現において多形慢性痒疹と類似の結果がえられるとともに、血清TRAC値が有意に高い傾向にあった。真皮に多くの好塩基球浸潤と明瞭な脱顆粒像が確認された。 3)マウス末梢神経からERK2を欠損させたconditional knockout mouseを作成した。セロトニンに対する掻破行動を観察したが著明な掻破抑制を観察することはできなかった。ERK1欠損マウスで掻破行動が変動せず、ERK1/ERK2阻害薬塗布でWTマウスの掻破が抑制されたこれまでの結果からみるとERK2欠損マウスの結果は矛盾していた。
|