研究課題
これまで申請者は、CP2ドメインを持った転写因子、Grainyhead-like3 ( Grhl3 ) の表皮における機能解析をおこなってきた。前年度までの研究成果から、Grhl3遺伝子をEB(embryoid body)細胞に過剰発現させることによって、多核、かつ細胞骨格の豊富な特異表皮細胞が誘導されことを見いだしていた(未発表データ)。そこで今年度は、その特異表皮細胞の動態を明らかにすることを試みた。原子間力顕微鏡 ( AFM ) を用いた計測結果から、Grhl3遺伝子にて誘導される特異表皮細胞は、他の一般的な表皮細胞と比較して弾性率が高い(固い)細胞であることがわかった。今後、様々な表皮細胞を培養し、これら細胞と今回のGrhl3陽性特異表皮細胞の違いを検討したい。またGrhl3陽性表皮細胞の生体内における機能を検討した。Grhl3欠損マウス胚では、神経管閉鎖時に存在する未分化性外胚葉細胞の分化異常を引き起こし、結果二分脊椎を発症することを報告している(Kimura-Yoshida et al., 2015)。今年度さらに表現型解析を進めた結果、生体内におけるGrhl3欠損胚の表皮層は弾性率が低下しており、そのため表皮が神経管を覆う際に表面積広がることが出来ず、結果神経管閉鎖不全を引き起こす要因となっていることがわかった(未発表データ)。さらに、今後、Grhl3遺伝子の生体内における機能を明らかにするために、様々な遺伝子改変アレルを持ったマウスを作製しており、現在解析を行っている。また、Grhl3因子がどのシグナル経路に関与するのか、阻害剤・活性化剤を添加したEB細胞の培養実験や、Grhl3遺伝子改変マウスと種々のシグナル欠損したマウスを交配させ、表現型の変化を検討している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
PLOS Genetics.
巻: 12 ページ: e1006380
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pgen.1006380
大阪府立母子保健総合医療センター雑誌
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http://www.mch.pref.osaka.jp/research/embryology/index.html