研究課題
私は、これまでの研究によりクロモグラニンB遺伝子(CHGB)のアミノ酸置換を伴う変異が、統合失調症を初めとする精神疾患と有意に関連することを報告した。さらにCHGBは、神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、異常凝集タンパクと共存し、病態の進展と増悪に関与することが示唆されている。 本研究では、①chgb-KOマウスの行動解析、②ALSモデルマウスにおけるchgbの役割の検討、③CHGBの遺伝子型におけるストレス反応性の個人差の検討、について実験を行った。①chgb-KOマウスにおいて、精神神経疾患様行動変化が現れるか、自発的運動量の測定、 PPIテスト、zero迷路を行い検討した。解析の結果、PPIテストにおいてはchgb-KO個体において変化が認められたが、いずれのテストにおいても、有意差には至らなかった。②ALS病態におけるCHGBの直接的な影響を検討するべく、 ALSモデルマウスとして確立されているヒト変異型SOD1-Tgマウスとchgb-KOマウスとの交配実験を行った。ヒト変異型SOD1-Tg(+)/chgb(+, -)雄個体を用意し、生存日数の比較とRotalodテスト、後肢伸長反応の観察を行った。いずれの項目についてもchgb-KO個体において改善傾向が見られたが、有意差までは至らなかった。③統合失調症患者および一般被験者に対してストレス反応性に関する質問紙を採血と共に施行し、各自のストレス状況、コーピング処方の評価を行い、EIA法によりクロモグラニンAおよびBタンパクの定量を行った。血中CHGB濃度は統合失調症の男性で特に高かった。また、ストレスとの関係では、心身症状、対人関係過敏症、抑うつ症状の点数が高いほど、血中CHGBが高かった。またCHGAタンパクにおいては、望ましいコーピングスキルの点数高値群において濃度が低い傾向が見られた。
すべて 2015
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Endocr J.
巻: 62 ページ: 797-804
10.1507/endocrj.EJ14-0471.