研究概要 |
抗精神病薬は糖代謝異常や体重増加などの代謝性副作用を引き起こし、これが統合失調症患者における心血管疾患さらには死亡率の増加につながるとされ非常に大きな問題となっており、そのメカニズム解明は急務である。 本研究では、内科領域における大規模genome-wide association study により同定されたエビデンスレベルが高い糖代謝異常や肥満の脆弱性遺伝子と、抗精神病薬が惹起する糖代謝異常や体重増加との関連を調べるという手法により、そのメカニズム解明を目指す。 本年度は、本研究開始前にサンプリングが終了しているものと合わせて、抗精神病薬内服群310例、健常群260例を本研究にエントリーした。そして、各症例の血液サンプルからDNAを抽出し、MC4R、ADRA2A、GIPR、ARL 15、adiponectin、KCNQ1、TCF7L2、GIPなどの候補遺伝子を解析した。そして、それらのゲノム情報と糖代謝の各パラメーター(fasting glucose, fasting insulin, HOMA-IR, AUC glucose, AUCinsulin, insulinogenic index など)、臨床情報(性別、年齢、BMI、ウエスト径、内服状況など)を対応させたデータベースを構築し網羅的解析を進めている。 また、インクレチンであるGIPに関しても検討を進めているが、その中で、オランザピン治療と胃がん術後のダンピング症候群の悪化およびGIP過剰分泌との関連が疑われた症例を経験し学会報告した。糖代謝への影響が強いと考えられているオランザピンが、インクレチンにどのような影響を及ぼすのか検討を続けている。
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