研究課題/領域番号 |
25461726
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
濱崎 景 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (50533494)
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研究分担者 |
吉川 武男 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, チームリーダー (30249958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 死後脳 / 多価不飽和脂肪酸 / 脂肪酸結合蛋白 |
研究実績の概要 |
前年度までの死後脳前頭葉(ブロードマン8:BA8)の解析において、多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸が対照(n=93)に比べて統合失調症患者(n=95)で有意に低下していることが判明した。そこで多価不飽和脂肪酸の取り込みや輸送、核内受容体と複合体を形成して他の遺伝子の発現調整に関わっている脂肪酸結合蛋白(fatty acid-binding protein: FABP)を測定した。先行研究としては、すでに分担研究者の吉川らのグループにより、統合失調症患者のBA46ではFABP7の発現が、健常者に比べて有意に増加していることが報告されている(Plos Biology 2007)。また、性差によるサブ解析では、男性だけに有意差が認められ、女性では認められていない。FABP 3, 5, 7 のmRNA発現量をReal-time PCR法にて測定し、内部標準としてGAPDH 遺伝子の発現量を使用した。対照と統合失調症でノンパラメトリックな比較を行った結果、統合失調症でFABP 3のみ有意に低下していた。また、性差によるサブ解析では、女性よりも男性でこの差が大きかった。更に各脂肪酸とFABP 3, 5, 7 との相関関係を見たところ、FABP 3と飽和脂肪酸であるベヘン酸(22:0)とリグノセリン酸(24:0)とに有意な負の相関関係が認められた。一般的にFABP 3はn-6系多価不飽和脂肪酸(アラキドン酸を含む)と高い親和性を持つことが知られているが、今回、統合失調症患者でアラキドン酸が有意に低下しており、そのために代償的にFABP 3の発現が増加したのではないかと考えられる。しかし、その一方でアラキドン酸とFABP 3には相関関係が示されず、FABP 3との関与のみで説明することはできない。今後更に細かい解析を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、計画通りに脂肪酸の測定が終了しており、追加的に脂肪酸結合蛋白の測定も行うことができた。今後はさらに細かい解析等を行って行く予定である。なお、パイロット的に行われた研究(症例数が少ない)はすでに論文化されている(Hamazaki K, et al. Psychiatry Res. 2015 in press)。
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今後の研究の推進方策 |
当初は脂肪酸の測定のみで論文投稿する予定であったが、脂肪酸結合蛋白を加えることにより、メカニズムの解明という観点から更に掘り下げて考察ができるようになった。得られた知見については、論文化していく予定である。
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