研究課題
基盤研究(C)
非定型抗精神病薬は臨床領域で頻用される薬剤の一つであるが、耐糖能異常や脂質代謝異常、体重増加などメタボリック症候群類似の症状を引き起こすことが問題となっている。実際、非定型抗精神病薬内服で困る副作用を尋ねた複数の患者アンケートの結果からは、このような“体重増加”が共通して上位に挙げられている。体重増加については現在のところ、非定型抗精神病薬のもつヒスタミンH1 受容体阻害作用やセロトニン5HT2c 受容体阻害作用による影響が最も考えられている。しかしアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹などH1 ブロッカーを長期的に内服している患者ではこのような体重増加などが問題になることはほとんどない。したがって非定型抗精神病薬による体重増加や耐糖能異常、脂質代謝異常などの副作用には、他の要因も関与している可能性が考えられる。申請者らは、メタボリック症候群の原因の一つとして注目されている細胞内コルチゾール再活性化酵素(11β-HSD1)に注目し、主として非定型抗精神病薬と11β-HSD1の関連について検討を開始している。非定型抗精神病薬のうち、耐糖能異常などの発現に注意喚起がなされているオランザピン(OLZ)、逆に代謝異常を引き起こしにくいと考えられているアリピプラゾール(ARP)、定型抗精神病薬の代表薬としてハロペリドール(HPD)、クロルプロマジン(CP)の4剤を用いたマウス由来肝細胞株刺激による11β-HSD1の発現についてmRNA及び蛋白レベルにて検討した。現在までのところ上記4剤全ての薬剤において11β-HSD1 が誘導されることを、mRNAおよび蛋白レベルで見出した。しかしこの結果に濃度依存性は見られておらず、再現性と詳細な検討を繰り返している。またこれら4剤にて向炎症性サイトカインであるTNFαの上昇も確認されている。
3: やや遅れている
蛋白レベル(Western blot)およびmRNAレベル(Quantitative Real-time PCR)での検討を行っているが、検出感度の改良(Western blot)及び再現性を確認する作業に時間を要した。最近、11β-HSD1 ELISA系が発売されたため、この系を用いた検証も追加で行い次のステップに速やかに進む予定である。
ELISA系による検討も追加した上で、11β-HSD1が誘導される条件を特定しこの誘導によるコルチゾール量の変化、糖新生に与える影響について速やかに検討する。この結果を踏まえて当初予定していたvivoへの検討に速やかに移行する。
Western blot及びReal time PCR(RT-PCR)での再現実験を繰り返していたため、新たな抗体、probeや試薬の購入が少なかった。そのため次年度使用額が生じた。H26年度には、最近入手可能となった11β-HSD ELISAキットを用いた評価を数回行い、これまでのWestern blot, RT-PCRの結果と合わせて検討する。また、脂肪前駆細胞3T3-L1細胞を入手し、肝細胞と同様の検討を行う。その後、in vivoでの実験に移行する予定である。したがってこれらに必要な、ELISAキット、細胞培養関連(培地、細胞、シャーレなど)、RT-PCR関連(RT試薬、RT-PCR試薬、プライマーなど)Western blot関連試薬(発色用ECL-Plus、メンブレン、ゲル、マーカーなど)、マウス購入費、飼育費、機器使用費、ならびに中間結果発表に伴う費用(学会発表、論文投稿費)を中心として使用を計画している。
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