研究実績の概要 |
統合失調症は遺伝率80%の多因子遺伝疾患である。近年、何万ものケースコントロールサンプルを用いた全ゲノム関連解析(GWAS)が行われ、統合失調症に関わるいくつかの遺伝子が同定されてきている。そのGWASにおいてZNF804A遺伝子多型と統合失調症の関連が報告されているが、その多型の機能はまだ分かっていない。本研究では、日本人におけるZNF804Aと統合失調症の関連、さらに、そのリスク多型の遺伝子発現やスプライシングに対する影響や、統合失調症にて障害される認知機能、脳構造、神経生理機能との関連についての検討を行うことを目的としている。これまで、我々は、ZNF804A遺伝子多型と視覚性記憶との関連や (Hashimoto et al., Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2010)、ZNF804A遺伝子多型と統合失調症型パーソナリティー傾向等の関連を報告してきた(Yasuda et al., Neurosci Lett. 2011)。また、ZNF804A遺伝子の新たなスプライシングバリアントを同定、その発現が統合失調症で異なることを報告し(Okada et al., Schizophr Res. 2012)、またZNF804A遺伝子が、TGF-βシグナルに関わる遺伝子発現に関与することも報告してきた(Umeda-Yano et al., Schizophr Res. 2013)。昨年度は、統合失調症患者の死後脳でのZNF804Aの発現解析の結果や、GWASで報告されたZNF804A遺伝子多型の、死後脳における遺伝子発現量への影響の結果について報告した(Umeda-Yano et al., Neurosci Lett. 2014)。本年度は、統合失調症のリスクに関連するといわれている神経生物学的な表現型である中間表現型とZNF804Aのリスク多型の関連を更に検討を進め、脳画像に関する検討も行った。
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