研究課題
基盤研究(C)
統合失調症では、社会機能の悪化は発症初期に生じ、発症後2~5 年に安定し、75%近くが5 年以内に再発し、自殺リスクも2~3 年以内が高い。そこで、発症後の5年間は、臨界期(Critical Period)と呼ばれ、予後に大きく関係する時期といわれている。そこで、治療開始時点と、5年後の臨床経過に注目し遺伝子情報のある500 例の臨床経過を調査した。評価項目は、性別、発症年齢、発症後の未治療期間(DUP)、発症時と治療5年後の臨床症状評価(CGI-S)(Clinical Global Impression) 、臨床改善度評価(CGI-I)、5年後の抗精神病薬の量と種類、入院期間、競争的就労の有無を調査した。次に日本人の既報告の症例対照研究において、①複数グループより同様の報告がある、②症例対照合わせて2000人以上、③P値が0.01以下を基本条件として報告された有力な疾患遺伝子のうち、グルタミン酸機能異常に関係するという報告がある9遺伝子(DAOA、Dysbindin、GRM7、SLC6A5、ZNF804A、NOTCH4、PPP3CC、PDE4B、EGR3)の10SNPsを、Taqman法を用いて解析した。9遺伝子のうち、5年後の就労と臨床重症度とSLC6A5との相関がみられた。また、統合失調症の発症年齢とPDE4B遺伝子との関連がみられた。SLC6A5はグルタミン酸のトランスポーターであることから、統合失調症のグルタミン酸機能障害との関連があるかもしれない。また、PDE4Bは、cAMPを不活性化し、PDE4B阻害薬は動物実験において、認知機能を改善させることが知られている。このことから、統合失調症の認知機能障害との関連があるかもしれない。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標であった、500例の臨床症状を収集することは完了することができた。次年度に予定していた、検討する候補となる20遺伝子のうち10遺伝子の解析を終えることができた。有意になったものは2つと多くなかったが、多遺伝子疾患と考えられる統合失調症の特性を考えると、1SNPの臨床経過に与える影響が少ないことは十分予想されるため、問題の無い結果と考える。
次年度は、残りの10SNPの解析と新たにSZ gene (Schizophrenia Gene)データーベースより再調査した5SNPを加えて、疾患候補遺伝子のSNP解析を行う。これに加えて、このサンプルは池田ら(2009)が報告した、統合失調症のGWAS解析におけるTop200SNPの遺伝子情報が既に得られている。今回調査した臨床症状とこれらの遺伝子情報を組み合わせることで、疾患候補遺伝子が、臨床経過に及ぼす影響についての検討を行う。もし、多くの遺伝子が、統合失調症の臨床経過との相関がみられることがあれば、統合失調症の発症に関係するアレルを多く持つことが、統合失調症の臨床経過の悪化に影響するかどうかを調査する。また、最終年度に予定している、GWAS解析とCNV解析を行う準備をしていく。
昨年度は、データー収集のための旅費、人件費が節約でき、実験に使用するプローブ代も実験が順調に遂行した結果節約できたため、残余金が発生した。次年度は新しく解析するTaqmanプローブの購入に使用する。論文投稿を準備しているが、その際に、追加の臨床データー収集が必要となった場合の旅費として、また、シーケノムプローブの作成、最終年に予定しているGWAS、CNV解析の費用の一部として使用する予定である。
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