研究課題/領域番号 |
25461736
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
近藤 毅 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40215455)
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研究分担者 |
三原 一雄 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30302029)
中村 明文 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (40381222)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 治療抵抗性うつ病 / 電気痙攣療法 / 光トポグラフィー / アリピプラゾール / 薬物動態 / 遺伝子多型 / 気質 |
研究概要 |
平成25年度は、治療抵抗性うつ病に対する修正型電気痙攣療法(m-ECT)の効果および光トポグラフィー(NIRS)の治療反応指標としての有用性を、17症例において中間総括した。臨床評価に用いたMontgomery-Asberg Depression Rating Scale (MADRS)は、m-ECT前後において有意に減少し(p<0.05)、NIRSの酸素化ヘモグロビン量は有意に増大した(p<0.05)。また、17症例を寛解群と非寛解群に分類して比較検討したところ、寛解群は非寛解群よりもm-ECT前後における酸化ヘモグロビンの変化量が有意に高かった(p<0.05)。よって、NIRSはm-ECTの治療効果の客観的評価に有用である可能性が考えられた。 次に、気分安定効果を有し治療抵抗性うつ病への強化療法に使用されるaripiprazole (ARI)について、ARIおよび脱水素体の定常状態血漿濃度濃度に与える各種遺伝子多型(CYP2D6, CYP3A5, ABCB1)の影響を89例で検討したところ、CYP2D6の変異遺伝子保有者で総和血漿濃度が有意に高値となり(p<0.01)、CYP2D6遺伝子多型のみがARIの薬物動態の予測に有用であった。 うつ病の遷延化に関与する気質を同定すべく、健常者893名を対象に、Temperament Evaluation of Memphis, Pisa, Paris, San-diego Autoquestionnaire/Munich Personality Testによる気質評価とZung Self-rating Depression Scaleによる閾値化うつ症状評価を行い、両者の相関を検討した。その結果、抑うつ・循環・焦燥・不安気質はうつ症状を悪化させ、発揚気質は予防的にはたらく可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度としては、修正型電気痙攣療法を要した難治性気分障害の症例が順調に集積しており、中間総括の結果も光トポグラフィーによる酸素化ヘモグロビン量測定が客観的反応評価に有用であることが示唆され、今後の展望に期待が持てる。 また、気分安定効果を有し難治性気分障害に汎用されるaripiprazoleの薬物動態にCYP2D6遺伝子多型が最も影響をおよぼすことが明らかになり、今後の同剤使用前の効果予測指標としての適用が待望される。 さいごに、健常者が対象であるため、臨床上の抑うつ症状とは直接関連する結果ではないものの、気質の中には増悪・防御因子の両者が存在することが判明し、難治・遷延化における気質に適合した認知行動療法アプローチを導入する意義についても、間接的証左が得られた点も大きい。
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今後の研究の推進方策 |
修正型電気痙攣療法を要するなど、より重症度の高い難治性気分障害が対象になることが多く、一方で、すでに気分安定効果のある薬剤が複数投与されているなど、治療抵抗性に際して気分安定効果を有する薬剤にて強化療法を行う症例の集積が、当初予想よりも不足している現状にある。 今後も協力機関からの症例提供を積極的に呼び掛ける予定であるが、場合によっては、難治性病態の中でも、特にハイリスクで治療の緊急性の高い混合病像に的を絞った形での研究計画へ修正するなど、研究期間内での効率化や達成度の向上を図る必要性についても検討・準備を重ねたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は症例の集積および臨床評価に加えて、基礎データとしての健常者の気質・症状評価に研究エフォートのほとんどが割かれており、近赤外スペクトロスコピーによるデータ収集も現有の医療機器にて行われたため、研究遂行において実質上のコストは発生してはいない。また、成果発表に関しても、今回は主催した第23回日本臨床精神神経薬理学会の中で行っており、旅費等の発生もなかった。 血漿薬物濃度、各種遺伝子多型およびバイオマーカーの定量に関しては、症例のさらなる集積を待ち、可能な限り同一条件にて次年度以降にまとめて定量を行うことが望ましいと判断した。 消耗品費コストのかかる血漿薬物濃度、遺伝子多型およびバイオマーカーの定量は、症例のさらなる集積を待って効率的にまとめて行うことが望ましく、次年度以降に持ち越して行う予定となった。 また、今年度の学会主催の予定はないため、次年度は他所での精神薬理関連の学会を中心に、随時、成果発表を行うための旅費および出版費用としても活用すべく使用計画を立てている。
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