研究課題/領域番号 |
25461736
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
近藤 毅 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40215455)
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研究分担者 |
三原 一雄 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30302029)
中村 明文 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (40381222)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 治療抵抗性気分障害 / ラモトリギン / バルプロ酸 / 血漿濃度 / 至適投与量 / 混合病像 / 量的評価 / 因子分析 |
研究実績の概要 |
治療抵抗性気分障害37例を対象に、lamotrigine(LTG)漸増による強化療法を行い、2週後の血漿濃度が8週後の血漿濃度を十分に予測することが可能か否かを検討するとともに、2週後に得られた血漿濃度より推定されるLTGの推奨投与量の算出を試みた。その結果、LTG単独群(16例)とvalproate(VPA)併用群(21例)において勾配は異なるものの、2週後(LTG投与量は、LTG単独群で25mg/日、VPA併用群で12.5mg/日)と8週後(LTG投与量は、LTG単独群で100mg/日、VPA併用群で75mg/日)のLTG血漿濃度は有意な正の相関を示した。2週後に示されたLTG血漿濃度より、我々が以前報告したLTGの最小治療閾値濃度(12.7umol/L)に達するために必要なLTG投与量を、LTG単独およびVPA併用の場合に分けてノモグラム化することが可能であった。本研究より、初期投与量の2週後のLTG血漿濃度がLTGの最終至適投与量を推定する有力な予測指標となりうる点が示唆された。 治療抵抗性うつ病の中には双極性が潜在する例も多く、早期に双極性に関連した背景因子や臨床徴候の同定される必要がある。その中で、うつ症状に包含される混合病像が注目されているが、DSM-5では実際に混合性うつ病で頻度の高い焦燥、易怒、転導の成分が含まれないため、臨床的な混合性うつ病の同定には鋭敏な基準とはいい難い。そこで、我々は量的評価を備えた15項目の混合性うつ病評価票を独自に作成し、当科外来・入院症例において、現在うつ病エピソードを有する94例に対し、本評価票による混合うつ病像の抽出を行った。因子分析の結果、緊迫した感情・思考、過剰反応性、易怒性、危険行動、の4つの因子が抽出され、特に前2者は頻度が高く、今後は実際の混合病像に呼応した定量的なカットオフ値の設定が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、難治性気分障害で頻用される可能性の高いlamotrigineについて、その至適投与量を早期血漿濃度モニタリングから予測することが可能であることを強く示唆するデータが得られており、薬物動態学的観点から気分障害の難治化予防のための合理的薬物療法を推進することが可能になった点でも、研究はおおむね順調に推移していると判断される。 さらに、次段階として、気分障害の難治化の一つの要因を成す混合病像に対しても、その定量的評価を目指した独自の混合性うつ病評価票の作成に取り掛かり、すでに94例のデータが得られており、予備的ではあるものの混合性うつ病の症候因子の分析を行っている。今後は、評価スケールを用いた混合病像のカットオフ値の設定に向けて、症例を蓄積する段階に進んでおり、予想以上の達成度が得られたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、うつ病エピソードを有する94例の連続症例において、混合病像の実態(症候および頻度)とともに、うつ症状および生活機能を評価し、神経生理学的指標(光トポグラフィー)および生物学的マーカー(神経栄養因子、炎症性サイトカイン)のサンプリングが行われており、次年度にはさらなる症例の蓄積を行い、最終的には、混合性うつ病の実態、重症度および生物学的背景についての包括的な解析が行われることが期待される。 また、難治性気分障害で頻用されるlamotrigineに関しては、血漿濃度の個体間変動が大きいことが知られており、本剤の代謝における複数の代謝酵素の遺伝多型が血漿濃度の個体差に関連する可能性が指摘されている。このため、すでに蓄積されたデータにさらなる症例を加えることにより、代謝酵素遺伝多型とLTGの定常状態血漿濃度および臨床反応との関連を総合的に検討する研究についても具体的な計画を立案して準備を進めたい。
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