研究課題/領域番号 |
25461737
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
石井 貴男 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40404701)
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研究分担者 |
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30301401)
松山 清治 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40209664)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40381256)
相馬 仁 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70226702)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルコール / 気分障害 / 血小板 |
研究概要 |
本研究は、アルコール大量摂取による脳障害と気分障害の共通する病態基盤について血小板細胞と神経幹細胞に共通する機能変化という視点から検討を行うものである。本年度は、ラットから採取した血小板を用いた検討を行った。神経細胞死は起こさないが、神経新生を抑制する濃度のエタノールを血小板に処置することで、血小板からの脳由来神経栄養因子(BDNF)の遊離が抑制されることを見出した。また、抗うつ薬であるSSRIの処置によって、血小板からのBDNF遊離は増加し、アルコールのBDNF抑制作用も軽減することが認められた。このような血小板からのBDNF遊離機能の変化が、アルコールによる神経細胞障害の機序になっている可能性および、抗うつ薬の作用機序の一つであることが示唆された。 これまでに小胞体機能異常と気分障害の関連が報告されている。一方、我々は、アルコールによる神経新生抑制作用の細胞内機序として、小胞体の機能異常が関連していることを見出して報告してきた。上述のアルコールによる血小板からのBDNF遊離抑制作用においても、小胞体の機能変化が関連している可能性を考え、各種小胞体ストレスマーカー分子の検索を行っている。また、同じく細胞内小器官であるミトコンドリアもその機能障害と気分障害の病態と関連するという報告があり、ミトコンドリア関連の蛋白質に関しても同様に検索を行っている。 当研究室では、アルコール慢性投与ラットおよび、アルコールと副腎皮質ステロイド投与による難治性うつ病モデルラットを作成して、行動解析を行った。今後においては、このモデル動物を用いた検討も行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、血小板内の脳由来神経栄養因子(BDNF)に主に着目して、血小板の機能解析を行った。血小板内の機能変化の解析においては、小胞体ストレスマーカーやミトコンドリア蛋白質の検出の予備的検討を行った。当初の計画では、モデル動物の血小板解析をする予定であったが、作成に時間がかかり着手できていない。しかしながら、次年度に行う予定のヒト(健常者)の血小板の機能解析は、すでに着手して予備的検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、アルコールおよび各種ストレスによる血小板細胞の機能変化について検討を行う。これまで、脳由来神経栄養因子(BDNF)や、小胞体ストレス関連分子に着目して検討を行ってきたが、アルコールや各種ストレスで低下が示されているMAP kinase経路やPI-3 kinase経路の分子なども検討を行う。実際のヒト血小板を用いた検討を進め、アルコールによる精神神経障害の生物学的マーカーの開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたよりも、使用する動物が少なかったため。 物品購入に使用する。
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