研究課題
本研究は、アルコール大量摂取による脳障害と気分障害の共通する病態基盤について血小板細胞と神経幹細胞に共通する脳機能変化という視点から検討を行った。近年、うつ病や統合失調症、アルコール依存症などの精神疾患患者において、血液中のBDNF量が減少しているという報告が続いている。これまでの我々の検討において、神経幹細胞の細胞死は起こさないまでも、神経新生を抑制する比較的低濃度のエタノールを血小板に処置することで、血小板からの脳由来神経栄養因子(BDNF)の遊離が抑制されることを報告してきた。また、抗うつ薬であるSSRIの処置によって、血小板からのBDNF遊離は増加し、アルコールのBDNF遊離抑制作用も軽減することが認められた。本研究から、血小板のBDNF遊離機能の変化がアルコールによる神経細胞障害の機序および、抗うつ薬の作用機序の一つである可能性が示唆された。一方我々は、アルコールによる神経新生抑制作用の細胞内機序として、小胞体の機能異常が関連していることを見出して報告を行っている。本研究では、血小板のBDNF遊離作用の細胞内機序として、小胞体ストレスと血小板機能変化との関連を調べた。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
細胞
巻: 47 ページ: 693-696
1346-7557