研究実績の概要 |
Mirtazapine(MIR)はノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA: Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant)と呼ばれるカテゴリーに属する抗うつ薬である。薬理学的にはα2受容体、セロトニン2および3受容体の強力な拮抗薬であるが、製剤としてはS-(+)体、R-(-)体が1:1となっているラセミ体として供給されている。本研究ではMIRの代謝に関連しているCYP2D6遺伝子多型のMIRの薬物動態への影響を検討した。研究プロトコールは獨協医科大学病院倫理委員会および弘前大学附属病院倫理委員会の承認を得ている。77名のMIR服用中の患者(男性33名、女性44名)を対象として高速液体クロマトグラフィーにてS-(+)-MIR, R-(-)-MIR, S-(+)-desmethylmirtazapine, R-(-)-desmethylmirtazapineの血中濃度を測定し、CYP2D6遺伝子型、喫煙、性別、年齢などの因子も考慮に入れて、解析の結果、CYP2D6遺伝子型が最も強い影響を示す因子であり、CYP2D6*10のホモ接合体を持つ個体は、持たない個体に比較して有意に高い血中濃度を示すことがわかった。尚、結果は以下の原著論文として掲載された。Yuki Hayashi, Takashi Watanabe, Akiko Aoki, Shin Ishiguro, Mikito Ueda, Kazufumi Akiyama, Kazuko Kato, Yoshimasa Inoue, Shoko Tsuchimine, Norio Yasui-Furukori, Kazutaka Shimoda. Impact of CYP2D6*10 on the pharmacokinetics of enantiomers of mirtazapine and its desmethylated metabolite in Japanese psychiatric patients treated with mirtazapine. Pharmacopsychiatry 48:279-285, 2015 また、S-(+)-MIR, R-(-)-MIR, S-(+)-desmethylmirtazapine, R-(-)-desmethylmirtazapineの抱合体を測定したところ、抱合体は未抱合体の10倍から数10倍存在するという予備的結果を得た。
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