研究課題/領域番号 |
25461742
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
長田 賢一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20233504)
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研究分担者 |
貴家 康男 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (60308450) [辞退]
芳賀 俊明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (80535625)
中野 三穂 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (90621574) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | P糖タンパク質 / クロザピン / アリピプラゾール / ジゴキシン |
研究実績の概要 |
P糖蛋白質(P-gp)は、脳血液関門を介した薬物の流通に影響する膜蛋白であり、抗精神病薬はほとんどがP-gpの基質でありP-gpにより輸送される。一方、治療抵抗性の統合失調症の治療薬であるクロザピンはP-gpの基質でないことが知られている。また、ジゴキシンはP-gpの基質であり、P-gpの薬物排出機能を評価する際に広く用いられる。 我々はC57BL/6マウスに10mg/kg/日のアリピプラゾール、クロザピンを6週間に渡って経口投与した。アリピプラゾール6週間投与群では、P-gpのmRNA発現は、Abcb1aが1.49、 Abcb1bが2.11倍 増加していた。しかし、クロザピン6週間投与群ではP-gpのmRNA発現は変化がなかった。またP-gpのタンパク質発現も、アリピプラゾール4週後には139.52% 、6 週後には 151.08%増加していた。クロザピン4週、6週間投与群ではP-gpのタンパク質発現も変化がなかった。 またP-gpの機能を調べるために、ジゴキシンの血漿中濃度、脳内濃度、脳/血漿濃度比を測定した。クロザピン投与群では有意差を認めなかったが、アリピプラゾール6週間投与群では、ジゴキシン血中濃度が1.59倍増加し、ジゴキシン脳/血清比は0.69倍と低下した。 これらの結果は、P-gpの基質であるアリピプラゾール長期投与によってP-gp発現が誘発され、増加したP糖タンパク質-gpにより、ジゴキシンを脳内から血清に排出され、血清ジゴキシン濃度が増加し、ジゴキシン脳/血清比が低下したと考えられた。しかし、P-gpの基質でないクロザピンは長期投与後もP -gp発現に影響がなかった。このことは、P-gpの基質である抗精神病薬の長期投与によりP-gp発現が誘発され、脳内から抗精神病薬の排出が行われるための治療抵抗性統合失調症が形成されている可能性を示唆した。
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