研究課題/領域番号 |
25461747
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 和紀 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40301056)
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研究分担者 |
松岡 洋夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00173815)
大室 則幸 東北大学, 大学病院, 助教 (60632601)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 早期介入 / 統合失調症 / ARMS / 予防 / 前駆期 / 認知機能 / 脳MRI |
研究実績の概要 |
統合失調症などの精神病性障害を顕在発症するリスクが高い「精神病発症リスク状態 at-risk mental state: ARMS」の中には精神病に移行せずに、陰性症状や弱い精神病症状を持続し、社会的に低い機能のまま経過する慢性群の存在が注目されてきた。本研究では、慢性経過するARMSの精神症状、社会機能、認知機能、脳構造を調べ、慢性群の予測に役立つ指標を明確にし、精神病性障害の病態をスペクトラムや次元的にとらえる仮説を補強することを目指す。 今年度は、東北大学病院精神科でARMSと診断された事例について、前年度までに解析を終えた事例に加えて、さらに追跡期間を延長した上で、連続例118例の縦断追跡データを明らかにした。さらに、脳構造MRIについてインテイク時のデータのあるARMS45例、初回精神病46 例、健常者33例についてSPM12を用いたVBM法により解析を行った。 118名の平均追跡期間は950±782日で、16名が精神病に移行した。移行までの平均期間は344±357日であり、6、12、24、36、48ヶ月のカプランマイヤー法による精神病への移行率は、7.1%, 10.6%, 14.4%, 17.8%, 20.4%であった。また、脳構造体積の群間比較では、ARMSでは、健常者と比べて右の上側頭回、中側頭回の体積が減少していた。また、初回精神病はARMSと比べて、左のヘシェル回と右の楔前部での体積減少を認めた。 結果から、ARMSが、4年という比較的長期の追跡を行った場合でも80%は精神病に移行しないことが明らかとなった。また、脳構造の結果については、非移行例を含むARMS全体として脳構造体積の減少が認められたことから、精神病に対するリスクをもつということ自体が特定の脳構造の異常と関連していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、順調にARMSの患者数は増えてきており、過去の蓄積データについても、その後の追跡により長期の予後が明らかとなってきている。しかし、長期追跡の臨床データであるため、データの漏れや間違いを探し、必要なデータ収集や修正を行う作業に時間がかかっている。MRIのデータについては、予備解析を行い、結果は過去に発表されてきた報告と概ね一致するものであった。しかし、長期追跡により、後に発症する事例もあるため、どの時点で非移行例と判定すべきかについての検討が必要となっており、非移行例と移行例との比較はまだ行っていない。また、情報収集については、国内の学会や国内で開催された国際学会により情報収集を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は最終年度となるため、最終的に結果を出すために最終の追跡データを集めた上で、精神病移行群、慢性群、中間群、回復群との分類を行う。特に、年度の前半には、データのクリーニングを行うことを重点的に実施する。また、予備的に得られた結果については、国外での学会で成果発表を行うとともに、海外の先進地域においてデータの最終解析と結果の解釈に必要な情報収集を行う予定としている。その上で、年度の後半に臨床データ、認知機能、脳構造MRIについてのデータ解析を実施し、結果を学会や論文などで公表する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外の学会に参加して、最新の情報を得ることを計画していたが、平成26年度には国内で国際会議が開かれ、これにより平成26年度における本研究遂行に必要な情報は得られたため、このための旅費が不必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、予備的に得られた結果について国外での学会で成果発表を行うとともに、海外の先進地域においてデータの最終解析と結果の解釈に必要な情報収集を行う予定としている。また、データのクリーニングに時間とマンパワーが必要であり、このための人件費により必要な人員を雇用し、研究を計画通りに進捗させる予定である。
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