研究課題
社交不安症(Social Anxiety Disorder:SAD)は、対人関係や社交場面における強い不安や緊張を主な症状とし、さらには社交的状況を回避することで、日常生活に多大な支障をきたす精神疾患である。選択的セロトニン再取込阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:SSRI)による薬物治療に顕著な改善を示さない患者に対しては、不安を惹起させる社会的脅威に対する認知解釈を、機能的あるいは適切な解釈に修正することにより症状の改善を図る認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)が行われる。その際、治療者は個々の患者の社会的脅威に合わせた曝露や認知再構成のための治療計画を設計する必要がある。これまでに社交不安症における情動処理に関する神経基盤を解明するため、顔画像などを提示した時の扁桃体や前帯状皮質などの辺縁系の活動を、機能的MRI(functional MRI:fMRI)やPETによる脳機能イメージングにより評価する研究が広く行われている。しかしながら、先行研究では各患者の社会的脅威を考慮した脳神経回路研究はあまり行われていない。そこで、本研究では社交不安症患者における、対人認知回路を誘発する課題(表情、注視およびスピーチ課題)に対する脳活動応答と症状ディメンジョンとの関連性を、fMRIや拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging:DTI)等のMRI画像を解析することで、患者個人の社会的脅威に応じた対人認知回路の機能的・形態的な差異から、社交不安症の脳神経基盤を検討し、認知行動療法などの精神療法を行う場合の治療計画の設計に役立てる。
2: おおむね順調に進展している
社交不安症患者および健常対照者のリクルートとMRI検査が順調に行われた。また、各種神経心理学的検査および不安水準評価試験の成績とMRI画像との関連性を解析した。
平成25年度までに得られた各種MRI画像と各種神経心理学的検査、不安水準評価試験の成績との関連性を解析する。
MRI検査が計画以上に行われたため、中間発表のための解析が遅れ、一部の予定を次年度に行うことにしたため。
画像解析に用いるソフトウェアを導入する。また、研究補助員のための謝金と、研究成果を学会で発表するための旅費と学会登録費、英文校閲費、論文投稿料として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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www.m.chiba-u.ac.jp/class/rccmd/researcher/research.html