研究課題
社交不安症は、対人関係や社交場面における強い不安や緊張を主な症状とし、さらには社交的状況を回避することで、日常生活に多大な支障をきたす精神疾患である。選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI)による薬物治療に顕著な改善を示さない患者に対して実施される認知行動療法(CBT)では、治療者は個々の患者の社会的脅威に合わせた曝露や認知再構成のための治療計画を設計する必要がある。そこで、社交不安症における情動処理に関する神経基盤を解明するため、顔表情画像を提示した時の扁桃体活動を機能的MRI(fMRI)により評価した。本年度までに、健常対照者19例、SSRI抵抗性社交不安症患者34例に対して、放射線医学総合研究所の3T高磁場MRIを用いてMRI検査を実施した。fMRI課題としては、顔表情課題は、日本人の顔表情データベース(ATR DB99)に収録されている8人の男女からそれぞれ4種の表情(中立、怒り、恐れ、微笑み)に画像処理を施し、髪を除く顔面のみを楕円形に切り抜き、グレースケールに変換した画像を提示した。被検者には各顔画像に用いた人物の性別を判定させた。対照としては、顔画像から作成したモザイク画像を作成し、中央の矢印の左右を判定させた。扁桃体活動をSPM8により解析した結果、健常対照者では、「怒り」に対してのみ強い活動が認められるのに対して、社交不安症の方では、中立の表情を含むすべての顔に対して扁桃体の強い活動が認められた(p < 0.05, 多重比較補正あり)。扁桃体は情動を反映する脳部位であることから、社交不安症患者では、怒りや恐れだけではなく、微笑み、中立という曖昧な表情に対してバイアスのかかった解釈を行っていることを反映している可能性が示唆された。これらの結果はCBTを行う場合の治療計画の設計に役立つことが期待される。
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Psychother Psychosom
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