研究課題
本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠如多動性障害(ADHD)および定型発達(TD)を対象に、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)と磁気共鳴画像(MRI)を実施し、疾患間の差異を明らかにすることを目的に実施された。本研究は、東京大学医学部倫理委員会の承認を得ており、実施に先立って、対象者に書面にて説明し同意を得た。本年度は、MRIを用いた検討が行われた。その結果、ASD群とTD群では、29個の脳部位から構成される16個の脳内の機能的結合に差異があることを見出した。また、その機能的結合はASD特性を評価する検査であるADOSの値と相関すること、ASDの機能的結合パタンはADHDとも異なることが明らかになった (Yahata et al. 2016)。昨年度までNIRSを用いて実施してきた前頭葉の血流データでは、ASD群、ADHD群ともにTD群に比べて、前頭前野の血流が低下するが、ASD群とADHD群の直接比較では、左のVLPFCにおいて疾患間の差が示された(Ishii-Takahashi et al. 2013)。したがって、本研究によって示されたNIRSおよびMRIを用いた疾患判別の結果は、今後、ASDとADHDに対する生物学的マーカーに基づく客観的な診断補助検査の開発につながる可能性を示唆している。精神疾患に関しては、NIRSがうつ病の診断補助検査として実施されているが、発達障害に対しては適用されていないため、臨床応用に向けて大規模な検討を行なっていくことが求められる。
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