研究課題
基盤研究(C)
平成25年度は、動物用7テスラMRI装置を用いて自閉症モデルマウスと野生型マウス各数例に対する①T1強調脳構造画像、②安静時脳機能画像、③MRスペクトロスコピー計測が実施された。MRI計測は各個体の幼年期(3週齢)から成熟期(8週齢)に至るまで縦断的に数回実施され、特に脳構造画像についてはマウス頭部専用の過冷却好感度RFコイルを使用しながら高空間分解能の画像データが収集された。また撮像期間の終了後は、摘出脳に対するex vivo撮像が行われ、超高精度・高信号対雑音比(S/N)の脳構造画像が得られた。収集された各種MRIデータについては、次のような下処理・解析手法の検討が行われた:①脳構造画像に対しては、全脳にわたって認められた信号ムラの補正方法、標準座標系への配置方法、各組織クラス(灰白質・白質・脳脊髄液)へ分画方法などについて検討が行われ、次年度以降に実施予定のVoxel-Based Morphometry (VBM)のための方法論の開発が進められた。②安静時脳機能画像に対しては、BOLD信号にアーチファクトをもたらす要因(体動・呼吸・心拍など)の特定と補正方法、撮像時に使用された麻酔がBOLD時系列データに及ぼした影響の評価方法、EPI平均画像の形態画像へのレジストレーション方法などについて検討が行われた。③MRスペクトロスコピーデータについては、標準的解析ソフトウェアを用いながら、主要代謝物についての予備的な計測が行われた。①~③を実施するにあたっては、ヒト脳MRIデータの解析で既に確立されている手法を参考にしながら、今後マウス脳画像で得られる所見との比較が容易となるような方法論の検討が行われた。また、ヒトとマウスで相互比較可能な脳指標を見出す目的で、包括型脳科学研究支援ネットーワークを通して収集されたヒトデータの解析を行い、自閉症に特異的な脳情報の抽出が試みられた。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度中に生じた動物用MRI装置の不具合により、データ収集のスケジュールに若干の遅れが生じたが、撮像されたデータからマウス脳画像解析の方法論の検討は進めることができたため、おおむね順調に進展していると考えられた。
今後も自閉症モデルマウス・野生型マウス双方のMRIデータ計測を継続し、前年度収集分と合わせ、統計比較(2群比較)が可能となるサンプル数(N>20)確保を目指す。また、脳構造画像や脳機能画像に対する統計解析を行う上で重要となる「脳画像テンプレート」の作成を可及的速やかに行う。現時点で研究計画の変更は不要と考えられる。
平成25年度中、使用されていた動物用MRI装置に不具合が発生し、マウスMRI脳画像データの収集に遅延が生じたため、これに割り当てられていた経費を次年度に繰り越す。動物の購入・飼育にかかる費用、データ保存用のメディアなどへの支出を計画する。
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