研究課題
平成26年度は、動物用7テスラMRI装置と過冷却高感度RFコイルを組み合わせることで、自閉症モデルマウスと野生型モデルマウス各群約10例に対するマルチモダリティMR脳画像縦断計測が実施された。本年度は特に脳構造画像と安静時脳機能画像に対する解析技術改善のための検討が行われた。脳構造画像については、画像全体にわたって顕著に認められた信号ムラの補正が、前年度に検討された手法だけでは不十分であることが分かったため、撮像プロトコルの再検討が行われた。これにより、各組織クラス(灰白質・白質・脳脊髄液など)への分画(セグメンテーション)精度が向上し、本研究で検討しているマウス種用の構造画像標準テンプレートの作成に成功した。これを用いて、既存データによるvoxel-based morphometry(VBM)の予備的解析が実施され、ヒトにおいて自閉症との関連が示唆されている相同部位での所見が閾値下で認められた。今後、より多くの例数の撮像を行いながら、野生型モデルマウス群との間での局所体積の比較検討を行う必要があると考えられた。また、安静時脳機能画像の解析についても、構造画像標準テンプレートを用いてヒト脳にて確立されているものとほぼ同等の手法によって画像下処理が行われ、代表的脳部位間における自発的脳活動の時間相関(安静時の脳機能結合)が検討が可能となった。平成26年度は例数が限定的であったため統計的有意な所見は見出されなかったが、次年度により多くの例数で検討を継続する意義があると考えられた。なお、ヒトとマウスで相互比較が可能な脳指標を見出すため、前年に引き続いてヒト安静時脳機能画像の解析を進め、成人自閉症当事者と定型発達者を高精度で識別できるアルゴリズムの開発に成功した(論文投稿中)。この識別に使用された安静時脳機能結合について、マウスの相同部位間の結合を詳細に検討する意義が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
MRI撮像施設の都合(利用可能時間、機械調整など)により、データ収集のスケジュールが遅れ気味であったが、撮像されたデータを元に解析技術の方法論がほぼ確立された。
今後も自閉症モデルマウス、野生型マウス双方のMRIデータ計測を進め、統計比較に耐えるサンプル数確保を行う。平成27年度中、データ解析に目途を付け成果発表を目指す。
MRI撮像施設の都合(利用可能時間、機械調整など)により、データ収集のスケジュールに遅延が生じたため、これに割り当てられていた経費を次年度に繰り越す。
動物の購入・飼育・運搬にかかる費用、データ保存用のメディアなどへの支出を計画する。
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分子精神医学
巻: 15 ページ: 2-6