研究課題
平成27年度は、自閉症モデルマウス(TG群)ならびに野生型マウス(WT群)に対するマルチモダリティMR脳画像縦断計測を継続するとともに、主にそこで得られた脳構造画像、安静時脳機能画像を用いながらヒト・マウスをつなぐトランスレータブル指標を見出す検討を行った。脳構造に関しては、高解像度MR構造画像(RAREシーケンス3D画像)をもとに、前年度作成された脳構造画像テンプレートを使用しながら、縦断的voxel-based morphometry(VBM)解析を行った。TG/WT群に対する「種別×週齢」の2要因因子分析を行ったところ、種別に対する有意な主効果が基底核などの部位で、種類と週齢の有意な交互作用が海馬周辺部位に認められた。すなわち、疾患特異的な脳構造変化のうち、発達過程に依存するもの、依存しないものの双方を個別に発見することができた。次に安静時脳機能画像については、麻酔下における自発的脳活動をgradient echoシーケンスにて撮像、解剖学的部位(約60個)を定義したアトラスを用いて各部位の平均BOLD波形を抽出し、部位間の時間的相関関係に関して群間比較を行った。結果として、扁桃体・被核・視床などの部位を端点に含む結合(全結合の約0.1%)について群間の有意差を認めた。さらに、これらの解析で得られた結果と、ヒトから得られる知見との間で、相同性に関する検討を行った。包括型脳科学研究支援ネットワークなどを通して収集された成人ヒトMRI脳構造画像、安静時脳機能画像をもとに、自閉スペクトラム症群・定型発達群を高精度に判別する機械学習アルゴリズムを開発した。この判別で使用された脳機能結合には、扁桃体や基底核の構造物を端点に持つものが多く含まれていることが分かった。本研究を通して、辺縁系~基底核の脳構造・機能結合が、ヒト・マウスに共通した自閉症のマーカーとなる可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Nature Communications
巻: 7 ページ: 11254
10.1038/ncomms11254
Clinical Neuroscience
巻: 33 ページ: 1192-1194