研究課題/領域番号 |
25461755
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
高橋 哲也 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (00377459)
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研究分担者 |
川谷 正男 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (10362047)
上野 幹二 福井大学, 医学部, 助教 (50600152)
岡崎 玲子 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (90647778)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 神経ネットワーク障害 / 脳波 / 非線形解析 / マルチスケールエントロピー解析 / グラフ理論 |
研究概要 |
神経ネットワーク障害仮説は種々の精神疾患における共通の神経基盤であり,自閉症スペクトラム障害(ASD)の病態生理を理解する上で重要な鍵を握る.またASDでは臨床症状の異質性や併存疾患が問題となるが,その要因として神経ネットワーク障害の多様性が示唆されている.本研究ではASD患者および他の精神疾患を対象に,脳波のマルチスケールエントロピー(MSE)解析を用いて脳波の複雑性を評価することで神経ネットワーク異常を抽出し,ASDと他の精神障害との相違点および共通点を浮き彫りにする. 気分障害での検討では,うつ病患者3名において電気痙攣療法(ECT)前後の脳波変化をMSE解析を用いて捉え,臨床改善度との関連を検討した.結果,ECTによって高周波帯域における脳波の複雑性が低下し,その低下は臨床症状の改善と関連することを報告した.一方,発達障での検討では,強迫症状を合併したASD患者(症例報告)における脳波に対するECTの影響をMSE解析を用いて評価した.結果,ECTによって前頭部においては高周波帯域の脳波の複雑性が低下し,後頭部においては低周波帯域の脳波の複雑性が上昇した.これらの結果から,気分障害患者と発達障害患者に対するECTの効果発現メカニズムにおいて,神経生理学的に共通点と相違点が存在することが明らかとなった. またASDおよび注意欠陥多動性障害と診断された同胞例(4組8名:すべて男性,6~11歳)の脳波に対してMSE解析を行った.上記の結果を踏まえ,前頭部および後頭部における脳波の複雑性の比を各周波数域別に検討した.結果,同胞内における高い類似性と同胞間での高い相違性を認めた(現在データを集積中). これらの結果から,脳波のMSE解析を用いた神経ネットワーク障害の抽出は,各脳部位がぞれぞれ異なる神経ネットワーク機構を持つことを明らかにし,病態生理の理解や診断,治療効果判定大きく貢献する可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画予定に比して,対象者のリクルートがスムースに行えていない.その理由として,対象者を当該施設を中心に行ってきたことが大きな理由にあげられる.
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今後の研究の推進方策 |
リクルートに当たり,研究協力施設を拡充(すでに倫理委員会で認証済み)することで対象者を増やす予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度から開始しているデータ収集が現在も進行中であることから次年度使用額が生じてしまった.またデータ集積後のデータ入力などの研究協力者への謝金などにおいても遅れが生じている. 今後,データ収集を速やかに進め,研究全体を円滑および効率よく進める.さらに,国内外学会における情報収集あるいは成果発表に伴う旅費,論文発表に伴う経費(論文掲載料,校正料など)として活用することを計画する.
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