研究課題
神経ネットワーク障害仮説は種々の精神疾患における共通の神経基盤であり,自閉症スペクトラム障害(ASD)の病態生理を理解する上で重要な鍵を握る.本研究ではASD患者およびASDに合併しやすいの他の精神疾患を対象に,脳波および脳磁図の非線形複雑性理論やグラフ理論を用いて脳内神経ネットワーク異常を抽出し,ASDの病態生理を明らかにすることが目的である.ASDおよび気分障害患者における電気痙攣療法の治療効果メカニズムに関し,脳波の非線形複雑性解析を用いて検討した.結果,電気痙攣療法によって脳波の複雑性が変化し,その変化は治療効果と関連することを報告した(Okazaki et al. 2013,2015).これらの結果から,気分障害患者とASD患者に対する電気痙攣療法の効果発現メカニズムにおいて,神経生理学的に共通点と相違点が存在することが明らかにした.平成27年度にはASD児および健常児を対象に脳磁図を計測し,脳内神経ネットワーク機構について非線形複雑性解析およびグラフ解析を用いて評価し,発達や臨床症状との関連性について検討した.結果,健常児では脳磁図の複雑性は発達によって上昇することがわかった.一方ASD児では幼年期において健常児に比べて高い脳磁図の複雑性を呈し,さらに健常児で見られた発達による複雑性の上昇が不十分であることが明らかとなった.またASD児における脳磁図の複雑性は臨床症状と関連した.これらの結果から,非線形複雑性解析の脳磁図への適用は,ASD児における脳内神経ネットワーク異常の抽出に有用であり,病態生理の理解や診断,治療効果判定大きく貢献する可能性が示された(Takahashi et al. 2016).またグラフ理論を用いたネットワーク解析では,ASD児において高いスモールワールドネス(脳内情報処理の効率性)を認めることを明らかにした(投稿中).
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 備考 (1件)
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